コンチワ、北ノ龍です。沖田と神楽のラブストーリー、二次小説です。
タイトルは:陶器でできた弱き獣
このタイトルを付けたのは、獣と言うのをよく神威に使われてるので、弱き獣とは神楽の事です。
そして陶器、割れ物という意味で、神楽の心を表してます。
それと、'陶器'は英語では'China'、そしてその言葉のもう一つの意味は'中国'=チャイナ娘。
夜兎は中国風だし、総悟にはよく「チャイナ娘」と神楽を呼ぶので、そこの意味をなんかダブってみました。
あらすじ:
(まず謝罪・・・→メインキャラのファンの方々、特に銀時や神威、すいません。第一話でこの人たち殺してしまいました。しかしその設定がないと僕の書いた沖神の話が進まないので、今回ばかりは勘弁して下さい。これからほかに出す二次小説や夢小説はこんな事は無いと約束致します・・・多分w)
~陶器でできた弱き獣~(長編)
銀魂二次小説-沖田x神楽
~1~『割れた陶器』
ここは戦場だ…
墓場だ…
やり甲斐の無い毎日の面倒な真選組パトロール、町の回りをして、いつもと変わらず屯所に戻ってすぐ寝るはずだった。
見回り中では喧嘩を止めて、か弱い女がやばいやつにナンパされそうなのを阻止し、トラブルを起こしたどっかの星のアマントをしばき、酔いすぎたオヤジの暴走を止める。そんなどうでもいい毎日の報告も書類をいちいち書くのも面倒だからしないつもりでいた、いつものように。
でも今日はそういかなかった…
事件が起きてしまった。
それは俺の人生を変えるターニングポイントだったんだ、っていつか後で思い返すだろう…
もう日は暮れ、辺りは暗くなっている。
特に町の端では誰も居なく、暗くて光が少しも届かない、街の死んだ部分のようだ。この説明がどれくらい正しかったか、あの最後の曲がり角で知る。
その角を曲がったら、俺の目の前に血の海が広がっていた。
その残骸の中に見覚えのある顔ばかりいて、俺は目を見開いた。
万事屋の旦那、連れのメガネ、チャイナ娘に、宇宙で最強だとも言われていたはずの海坊主。
辺りを見回してみればもう一人。あれぁ確かアマントとの中でも最強と言われている宇宙海賊春雨の…名前が思い出せない。
死ぬはずのねーやつばかりがそこらじゅうに転がり落ちている。
なんていうざまだ。
旦那は誰が相手でも死なねーと思ってたのに…今俺の前にあるのは旦那の、この世界をもう映さない眼だ。
まっすぐ、誰をも貫くその眼は、自分に跳ね返り、貫かれたかのように見開いていて、旦那には似合わない表情をしている。
そんな旦那の瞼をそっと閉じる。
そして眼鏡のヤローのところに行って同じことをする。
おそらくこいつが真っ先に死んだんだろう…
「だから弱いものは戦場に来ちゃダメなんでい…」
聞こえないとは分かっていても、自分の口からはそんな言葉が零れる。
「お前が泣く事があっても…姉ちゃんを泣かせたらダメじゃねーですかい。それは男として―いや、弟として恥ずべく事ですぜ…」
そんなことを言う俺だが、所詮俺も姉を置いて戦場を選んだ。
口ではきれい事を並べるが、俺たちは男としてのプライドを捨てられないんだ…
こいつの気持ちは俺が一番分かっている…
だからこいつの決めた覚悟と判断が間違っていたなんて絶対に言えない…
次の死体は、海坊主。
この人の目は閉じている。
こんな人が殺されるくらい強い相手だったのだろうか、あの春雨の三つ編みは。
そう思い、そいつの方へと顔を向ける。
そしたら俺はまた驚きで目を見開く。
何故ならヤローの顔は完全に潰されていたからだった。
―相打ち…じゃなさそうだ…
だったら誰が…?
ほかに敵がいたのか?だとしたらヤローの味方のはずだ。
春雨の三つ編みが旦那の味方をするはずがねー…
だがヤローの顔は潰されてる。
裏切られたのか、仲間に?
しかし、だとしたらほかの奴らの顔も潰されてるはず…
何でこの春雨の三つ編みだけ顔を潰す必要があったんだ?
分からない。分からない質問が多すぎて頭がくらくらしだす。
残るはチャイナ娘。
立ち上がってチャイナ娘のほうへ歩き進めると、その先にいるのはチャイナ娘でない事に気付く。
慌てて近づくと、そこにはチャイナ娘の赤い服の切れ端だけがある。
あいつはどこにいる!?
辺りを見回すとどこにもいない。
探し出そうとし、ふと下に目が行く。
血の跡だ。
この場を離れてく形跡を残している。
―もしかしたらあいつはまだ…
自分の足が急いで血の示す方向へと進む。
かなり離れたところに川がある。町の中心から伝わってくる川だ。
下を見下ろすと見覚えのある白肌の女がうずくまっている。
3メートルほどあるこの石の壁が今のチャイナ娘と俺の距離の差。
俺は軽々とそれを飛び越し、そいつの様子を伺う。
体勢からして、この女はまだ生きていると分かる。
よく見ると震えている。
―泣いてるのか?
足を強く抱きしめ、顔を隠してるから分からない。
「…おい、大丈夫か?」柄にも無く優しい声をかける。
この場でSモードを目覚まさせても意味が無いし、何も解決しない。
それにいつふざけていいのか、いつシリアスに接しないといけないのか、この俺でも区別は付く。
でもこの状況で何もできない自分がいる。
どうすれば良いか分からない自分がいる。
何も反応しないチャイナ娘に触れる。その時初めて顔を上げ、俺を見上げた。
目は腫れて赤い。頬は濡れている。
だけど泣きつかれたのか、もう涙は流していないようだ。
そしていつもの輝きを眼に宿っていない。
こいつの眼は死んでいる―というか俺を写していない…
俺を意識していない…
意識が…無い。
口が利けないのかと思った時、チャイナ娘が口を開いた。
「私に触れるナ」
無意識で喋る…
無意識に俺に反応するのは…なんでだ?
強い…思い?
そこまでして触れてほしくない理由でもあるのか?
「私に近寄るナ」
棒読みでチャイナ娘は言う。姿はまるでボロボロの人形。
哀れみが伝わる。
「何言ってんだい?」声をかけてみる。
俺の声は…届いてるのか?
血に染まった手を広げて見詰めるチャイナ娘はまた話し出す。
「私に近寄ると…ろくなこと無いネ…
死にたく無かったら私から離れるヨロシ…」
壊れた機械のように淡々と話すチャイナ娘の言葉を聞き、自分の目が再び見開いた。
俺の頭に一つの考えがよぎった…
―こいつが…殺ったのか?
信じられねー。
「おい、何言ってやがんでい、いったい何が―?」
俺の言葉は途中で途切れる。
急に頭を押さえチャイナが泣きだしたからだ。
「イヤーーーーーーーーー!!いやアル!いやアル!いやアル!いやアル!」
俺の言葉で何か思い出したくないことを思い出したかのように叫びだす。
こんな心の壊れたこいつを見るのは初めてだ。
ボロボロで、泣き叫ぶ、か弱い女に見える。
いつもの、女らしさに欠ける言葉使いや態度がどこにも無い。
まるで別人…
声をかけても俺を意識していない。
自分の中で苦しんでいる。
―引っ張り出さねーと…こいつは狂う
―名前…チャイナの名前…思い出せねー!
その時ふと旦那のこいつを呼ぶ声が聞こえた気がする。
―…神楽
―そうだ。こいつの名前は…
「神楽」
静かに囁いてみた。
その瞬間チャイナは目を覚ましたかのように眼の曇りが晴れ、俺の方へと見上げる。
「…サディスト?」
俺を認識する。
「総悟だ」と俺は名前を直す。
「…お前、何があったんだ?」
チャイナの頬に涙が伝う。
サディストとはいえ、この傷に触れてはいけねーと強く自分に言い聞かす。
「とにかく、近藤さんらがもうすぐここへ来る。お前はまず俺と一緒に来い。」
だがチャイナはピクリとも動かない。
手を引こうとすると払われる。
「おい、一生ここにいるつもりか?」
「ほっといてヨ! 私の事なんか! サディストには関係ないネ!」
「ほっとけるわけねーだろ。これが俺の仕事なんでい!」
「....」
チャイナが少し傷ついた顔をする。
―仕事だから仕方なくしてるんだとでも聞こえたんだろうか…
苛立って髪をかき上げる。
普通なら誤解を解くために殴ってやるところだ。
何バカな事考えてやがんでい、とでも言って。
でも今のチャイナは陶器でできた割れ物のよう。
殴ったら砕け散る…
―こんな奴、どうやって接すれば良いかわからねー…
「私に構わない方が良いネ…」
小さく、脆い声。
また泣き出しそうになっている。
「何で?」
俺はそんなことしか言い返せない。
「私が気を失って暴走したら化け物になるネ。お前は確実に死ぬアル。」
か弱い声で言うこいつの言葉が、俺に鋭く響く。
そして最後の言葉が俺の心を凍りつかせた。
「銀ちゃんや新八やパピィを殺した神威を…私が殺してしまったアル」
声が出ない。
―この女、いったい何もんなんでい? 旦那より強いだと?いつも俺と互角でやり合ってたいつものあれは…なんだったんでい?
俺の様子を伺い、チャイナの目が悲しみの色を帯びる。
「私が…怖いアルか?」
俯いて呟く。
俺の体が勝手に動いた。
考えなくても、しなければいけない事が分かった。
俺は小柄なチャイナ娘をそっと抱きしめて、安心感を与えようとした。
―脆く、小さな体だ。
強く抱きしめたら今にでも崩れそうだ…
「怖かねーよ。全然怖くなんかねー」
俺の思いが伝わったのか、チャイナは俺の背中に手を回し、俺の肩で泣く。
怖かったのだろう…ひとりになるのが。
そしてこの時、俺の知らない、感じたことの無い感情が俺の中で溢れ出した。
守りたい…
俺が守らなきゃいけねーんだ。
男として、このか弱い女を守るのは俺の役目だと感じた。
こいつはいつも強がっているから分からなかったが、こいつもまた普通の、か弱い、小さく、脆い女なんだ。
旦那がいなくなってこいつを守る奴は誰もいなくなった。
―姉上、俺は…この子を守りやす。
俺は沖田総悟、
真選組一番隊隊長。
18になって初めて守るべき女を見つけた…
