Title :新しい癖
Author:ちきー
DATE:2007/07/18
Series:Death Note
Rating:G
Category:Romance,Drama,AU
Paring:L/Light
Warning:slash
Sequel:紡がれるもの
Disclaimer:
ここに登場しているキャラクターの著作権はすべて集英社及び、小畑、大場両先生にあります。作者は楽しみたいだけであり、著作権を侵害するものではありません。また、この作品で利益を得るものでもありません。
Note:
「紡がれるもの」の続きです。時間軸的には「紡がれるもの」と「加わるもの」の幕間の出来事になります。
Summary:
月が困るLの新しい癖とは?
Lに新しい癖が増えた。
唇を指で弄る癖だとか、足を椅子に乗り上げる座り方だとか、幼児性の抜けない癖を既に持つが、それも推理力向上に役立っているのだから一概に悪いとは言えない。
だが、新たに増えた癖と言うのは、その逆で明らかに推理力を減退させるものだった。やり始めると呆けて、しばし使い物にならない。
癖が現れ始めた当初は長く続かないだろうと踏んだのだが、あいつの性格通りと言うか、なんともしつこく、長期に渡ってこの癖は抜けていない。
それに、その癖から正気づかせるために、最後には殴る羽目になるのだが、いつもの「一回は一回」はなく、気持ちの悪いことに殴られて笑っている始末だ。
更にまずいことに、その癖は僕にまで影響を及ぼす。きっかけを作ったのは僕だとは言え、彼の癖にはだいぶ、いや、かなり困っている。
「おい!もういい加減にしたらどうだ!」
端末の前に座り込み、呆けているLを見下ろして怒鳴りつけた。端末の表示はさっきから一向に変えられていない。
「放っておいて下さい」
見上げて来るLの顔は柔らかかった。家族にしか分からない程度の表情の変化だが、この顔は喜んでいるとか、嬉しいだとか、幸せだとか、そう言ったプラスの部類に入るものだ。
「いつまでそうしてる気だ?」
腰に手を当ててLを見下ろす僕の手を取り、指に口付けられた。正確には僕の左の薬指に嵌められた指輪に。
「月君…」
「何?」
「月君は私の夫なんですよね」
「呆けるには、まだ早くないか?」
「そして、私も月君の夫」
僕の手を握ったまま、幸せですと呟くLが恥ずかしくて、思わず殴っていた。けど、その反撃は蹴りではなくて。ぎゅうと腕ごと抱き込まれてしまっては拳も出せない。仕方がないから、こつりと頭をぶつけてやった。
「いい加減に慣れろよ」
「早く慣れてしまっては、勿体無いじゃないですか」
「…腑抜けた探偵にプロポーズした訳じゃないんだぞ。指輪、返して貰おうかな」
「それは嫌ですねぇ」
Lのその声も幸福感で彩られていた。
遡ると、先日、僕はLにプロポーズした。Lだけが僕にプロポーズするのはずるい。Lが関係を形にすることに反対でないのなら、僕もきちんと愛する人に縛られて欲しいと伝えたかった。
言葉と共に指輪をLに突き出すと、ひどく驚いた顔をしていた。そして、その衝撃が去ると、Lは幸せそうに笑った。
あの時の僕と同じく、指輪を嵌めて欲しいと言われたので、少し震える指で僕はLの左の薬指に嵌めた。
それ以来、Lに癖が増えた。推理する時でも、甘味を摂取する時でも、無意識に指輪を弄る癖。当初は、Lがそうしているのを見るとくすぐったかった。
けれど、それがこうも長く続くと、なんだか気恥ずかしくなってしまうのだ。
こんなにもLが喜ぶと思わなかった。こんなにもLの顔が緩むほど、僕が彼に幸せを与えられている。
跳ね返った彼の幸福に酔ってしまう自分に気づき、恥ずかしくて困ってしまうから、本当に早く慣れて欲しいと思う。
END
