Title :分かつまで、分かつとて
Author:ちきー
DATE:2007/02/04
Series:Death Note
Rating:PG-13
Category:Romance,Drama,AU
Paring:L/月
Warning:slash,Character Death
Archive:Yes
Disclaimer:
ここに登場しているキャラクターの著作権はすべて集英社及び、小畑、大場両先生にあります。作者は楽しみたいだけであり、著作権を侵害するものではありません。また、この作品で利益を得るものでもありません。
Summary:
死にまつわる、とても短い短編3本のオムニバスの様な話です。

竜崎の体を父と二人で、寝室に運んだ。

僕が知る限り、滅多に閉じられることのなかった眼が、今は閉じている。

ベッドに座り、永遠に休む竜崎の傍らで、彼の顔をじっと見る僕を残し、父は部屋から出て行った。手錠で繋がれた間に出来た繋がりを、朧ながら父は察していたのだろう。何も言わず、そっとしてくれたのが有難かった。

手の甲で頬を撫でた。何時だってひんやりとしていたが、それでも生気を感じない冷たさではなかったのに。

あの時。僕の腕の中で彼の体温が徐々に失われるのに、満足と不思議な心持ちを感じていた。

あぁ、彼でも死ぬのだな。僕は何故だか彼が死ぬことはないと、そんな事あり得ないのに、心の何処かで思っていた。僕が彼を死に追いやったとしても、彼なら大丈夫だと。

だけど、もう動かない。

頬を撫でていた指で唇を辿る。何度も重ねた唇。それと同じ位、偽りと疑いを吐いた唇。

そっと身を屈みキスを落とした。もう返されることのないキス。

僕は彼に愛していると言った事はあっただろうか。彼に負けない程、吐いた嘘の中、その言葉を言ったことはあっただろうか。僕達の真実は嘘の中にある。数多の嘘の中から彼はそれを拾い上げただろうか。

僕から溢れた滴が落ち、彼の冷えた頬を流れ落ちた。

こんなにも心を動かされることは、きっともうない。

こんなにも。こんなにも。こんなにも。

もう彼以外は。

俺はライトの味方ではないし、ライトに手を貸すこともしない。ただ退屈が紛れればいい。ノートを落としたのだって、その為だ。

月と一緒にいると面白な事が多く見れた。だが、月と竜崎と呼ばれた男が初めて出逢った時以上に面白な事はまだ起きていない。

ベッドに横たえたLに月が口付けたのを見下ろし、その時の事を思い出していた。

二人がお互いを認識した時、それは起きた。

それまで異なった値を示していた月とLの頭上にある数字がさらさらと変化し、どの桁も全く同じ値になったのだ。

月ほど賢くはないが、それでも俺はそれが何を意味するのか分かった。

これからも面白なことは続くのだろう。

*** *** ***

あと40秒。

ニア達が何か話しているが、もう聞かなくていい。背後に現れた人影に、痛みで分散しかける意識を集中させた。

「お前はもう舞台から降りたはずだろう」

「袖に下がっただけです」

囲われた腕の中で体を反転させられ、葬ったはずの猫背の男と対面する。相変わらずの白いシャツが僕の血で染まっていく。血に塗れた手を取り、舌で血を拭う。そして、指と指を組むように固く握られた。

「分かれないように、こうして居ましょうか?」

馬鹿な男。僕はお前と一緒の所に行かれないのに。

「そうだね。そうしていよう」

だが、僕は心地いい僅かな時を味わいたかった。残り少ない時間をキスを交わすことに費やす。

「貴方は最後まで…」

「え?な、に…」

何度目かのキスの間、そっと彼が呟いたのを聞き返したが、再びLに翻弄された。

あと十数秒。

「次に眼を開けても、きっと貴方の前に、月君」

「君と一緒なら退屈しないだろうね」

最後の最後まで嘘なのは僕達らしいだろう。

耐え難くなってきた胸の内の痛みに、組んだ手を互いが強く握る。最後にお前の姿を焼き付けて、僕は眼を閉じた。

肉体から離れる一時、薄れた意識が再びはっきりした。

閉じた目蓋を持ち上げると、眼の前には…。

眼の前には。

「たかが死程度で、私たち二人が分かたれると思いましたか?」

END