(訳註) 本ページの内容は、(訳註)または(TRANSLATOR'S NOTE)と明記してある場合を除き、全てNenya85さんが書き本サイトに投稿した"Simply Complicated: A View from the Side"を、ねこまが翻訳し、作者であるNenya85さんの許可を得て公開したものです。(訳註)または(TRANSLATOR'S NOTE)と書いてあるものは、翻訳者であるねこまが書き加えたものです。
TRANSLATOR NOTE: The contents on this page are the Japanese translation of "Simply Complicated: A View from the Side" written by Nenya85 and posted on this web site except indicated by (訳註)or (TRANSLATOR'S NOTE). The texts indicated by (訳註) or (TRANSLATOR'S NOTE) are written by Nekoma, the translator of this fic. The contents are posted by Nekoma upon the author's permission.
読まれたらレビューをよろしくお願いいたします。私は、あなた方がこの話をどう思われたか-そして、『それはきっとカードの中』にどのように合っていると思われるか知りたいのです。
作者註: これは小さな修正と改訂をして再投稿したものです。以前のタイトルは『城之内の話』でした。Kagemihariの新しいタイトルと助力に感謝します。
これは闇海作品『それはきっとカードの中』のサイドストーリーです。『単純に複雑: 外野から見て』は、闇遊戯と瀬人の恋愛関係についての城之内の見解をもっと聞きたいという声があったので書かれました。そして私は城之内の一人称を書いてみたかったのです。では、どうぞ…。
城之内の話
「ちくしょう、遊戯、お前はこいつをパズルから出すべきじゃなかったんだ。もしこいつが出てきて最初にすることが海馬瀬人との同棲だっていうならよ!」
オレはこれを言うべきじゃなかった。いや、発言に問題があったわけじゃ全く無い-だが、それは奴らに笑うチャンスを与えちまった。オレが本当に言おうとしていたことを無視して、「城之内らしいや」で片付けるチャンスを。
それは問題にもならなかった。闇の遊戯は、どういうわけだか、海馬を亀のゲーム屋に連れて来たいと思った。遊戯にはそれで充分だったし、杏子は遊戯の望むことなら何でも賛成する。そして本田は役立たずだ。
残るは、オレと双六じいさんだけ―なのに、じいさんは笑って頷いた。
オレ達は、まるで変なコンガの行列みたいだった。オレは本田にとって一番の親友だったし、遊戯はオレの一番で、闇の遊戯は遊戯の一番。そして、オレは海馬が近くに来ることで、この鎖が断ち切られるんじゃないかと恐れていた。
でも、オレは海馬の怪我が治った後も、闇の遊戯が彼の所属する家に帰ってこなかった時点で、何かが起こっていると気付くべきだったんだ。オレが知っている人間の中で、自分自身を傷つけないと弟に約束したからという理由で、誰かを挑発して自分の肋骨を折るように仕向けようとするのは、あのクソ野郎だけだ。もっと強く殴ってやるべきだったんだ。
もっとムカつくのは、オレは最初、遊戯が闇の遊戯に、海馬邸に残って海馬の手助けをしろと提案したとき、それをすごく面白いと思ったってことだ。オレは、海馬は闇の遊戯を見る度に、彼が負けた数々のデュエルを思い出すだろうと想像した。オレはそれは折れた肋骨より痛むだろうと思ったんだ。でも、海馬なら、落ちてもうまいこと猫みたいに足で―あるいは背中で―多分奴にはどっちでも同じことだ―着地しかねなかったんだ。
それか、海馬の舞に対する反応―っていうか、むしろ無反応―を見たときだって、何かあるって気が付くべきだったんだ。彼は明らかに、舞のことを、辛うじて要求を満たす程度のデュエリストとしか考えていなかった。彼に挑戦する程ではないその他大勢の一人としか。今じゃオレは、カードゲームが誰にも負けないくらい好きだけど、舞を見たとき、カードのことを考えるのは最後だ。(まず、あの胸紐を解くほうが先だろ。)
オレは、あの二人が会う前は心配していた。つまり、海馬は金だとか豪華な暮らしだとか、舞が普通男に求めるものを全部持っている。でも、彼女がくるっとターンを決めてあいつの傍を通り過ぎたとき―あのヒップは誘っていた、オレの見たところ―あいつは血管に流れている冷え切った液体の一滴だって零さなかったんだ。
それがほかの男なら、こう考えただろう―こいつはゲイか、冷たく完全に死に切っているかだって。それは海馬だったから、冷たく完全に死に切っているってほうがありそうだった。
海馬が押し倒されてる図ってのがすごく可笑しいのは確かだ。オレは面と向かって奴を馬鹿にして、下になる生活ってどんな感じかって聞いてやりたかった。でも、闇の遊戯を一目みて、もし海馬がオレの手足をバラバラに引き裂いた後にオレの欠片でも残っていたら、闇の遊戯は喜んで残りの仕事を完成させるだろうって分かった。
その考えはオレを酷く悩ませた。オレは、あの闇の遊戯の目つきを知っている。でも、それは以前は遊戯にしか向けられなかったものだ。寝たいってなら分かる。もし、闇の遊戯が氷のように冷たい、青い目の人殺しに取りつかれていて、そいで男が好みだっていうなら、それは彼の趣味だ。海馬とやるってのはまあいいんだよ。でも、何で闇の遊戯は彼を気にかけているようなそぶりを見せるんだ? 何で突然よりによって海馬瀬人なんかを庇うようになったんだ?
可笑しいのは、海馬と同様、遊戯だって実際は保護を必要となんかしていないってことだ。何が言いたいかっていうと、オレは童実野港で誰がオレを救ってくれたか知っているし、それは闇の遊戯じゃなかった。でもそれは核心じゃない。遊戯を守るのは、彼にそれが必要だからじゃない。彼が守るに値する人間だからだ。オレはそれに腹が立って気が狂いそうだったんだ。約束を守るのは難しかった。闇の遊戯は、あんなにも長い間遊戯の一部だったくせに、どうやって海馬なんかの中に守るに値するものを見つけたっていうんだよ?
あいつには違いが分からねえのか?
闇の遊戯は困ったときに背中を預けられるスゲー奴だ―でも、オレの一番の親友は遊戯だ。遊戯は、誰に対しても、その人の最良の部分を見つけ出すんだ。彼はオレを見ても、どこにも行きようがない能無しの負け犬だなんて思わないんだ。彼は機知に富み、誠実な友を見るんだ。そしてオレは、彼の傍にいるときは、自分がそういうやつのように感じられるんだ。オレはそうなりたかったし、彼の傍ではそうなれるんだ。
エジプトにこんな格言がある。「敵の敵は、わが友である」。で、オレの敵が、オレの友の恋人だって場合はどうなるんだ?
オレがこんなしゃれた言い回しを知ってて驚いただろ? 実はこれは学校で習ったんじゃないのさ。マリクから聞いたんだ。自分を闇の世界に送った男の言葉は、頭にこびりついちまうもんだぜ。
それはオレと海馬の共通の体験で、これについてもオレは考えたくなかった。勿論、オレは闇の世界に閉じ込められたことを思い出した。それにオレは殆ど殺されかけた。舞は殆ど殺されかけた。海馬はそこに三度行った事がある。一度目の時は、彼は復讐に燃えて帰ってきた。二度目は、半狂乱でモクバを探しに。今度の彼は何を求めて帰ってきたんだろう?
オレは双六じいさんと話すために後に残った。オレは本田がオレに加勢しなかったことがあまりにもムカついて、奴と一緒に帰る気がしなかった。双六じいさんは、オレ達の誰よりも海馬を嫌っていたし、彼にはそれだけの理由があった。それでも、彼は闇の遊戯の提案に乗って、海馬を彼の家に迎え入れた。
彼は甘いってわけじゃない。彼がただの優しくて穏やかなおじいちゃんだって思うのは、彼からデュエルモンスターズを教わったことの無いやつだけさ。
「オーケー、じいさん。話してくれよ。何であのいかれた野郎を家に入れようとするんだよ? あいつはじいさんを殺そうとしたんだぜ? 忘れたのかよ?」
「あの時の少年には、わしは全く関りたくない。しかし、海馬は一体あの時と同じ少年なのかね? 今の彼―あの子供なら、わしは家に迎え入れられるかもしれん。遊戯は彼が変わったと言う。わしもそれをこの目で見たいのかもしれん」
オレは、海馬は何も変わっちゃいねえって怒鳴ってやりたかった。人は変わるものじゃねえって。(親父が何度心を入れ替えるって誓ったと思う?) でもオレは黙っていた。結局のところ、オレだって変わった―少なくとも、そうだと望んでる。初めて出会ったとき、オレは遊戯にとっていじめっ子で、友達じゃあなかった。オレが自分の為には望んだ償いのチャンスを何故海馬には与えないのか、双六じいさんに尋ねられたくなんかなかった。
「何だって皆それをくどくど言うんだよ?」オレは代わりにこう言った。「もし本当にあいつが変わったとして、それであいつのしたことが帳消しになるってのか? どうしてあんな奴にもう一度チャンスをやろうとするんだよ?」
「それは、彼がわしの孫と同い年だからじゃよ。お前さんと同じ歳じゃ」
「ばかなこと言わないでくれよ、じいさん。海馬は確かにオレ達と同い年かも知れないけど、子供じゃない。あいつは多分そもそも子供だったことなんかねえんだよ」
双六じいさんはため息をついた。「わしくらい歳を取ったら、もしかしたらお前さんにもそれが悲しいことだとわかるかもしれん。それに、遊戯と闇の遊戯から乃亜の世界でのことを―彼の父親のことを聞いたんじゃ。わしは、二人が知っているよりももっと多くのことがあったに違いないと思っておる。海馬は作られたんじゃ。生まれつきそうだった訳じゃない」
「あいつの屋敷と金を見てみろよ。奴に何か悪いことが起こったことがあるって? 乃亜の世界でだって―奴はずっといつもどおりうぬぼれた嫌なやつだったぜ。オレがあの世界で知ったのは、奴が昔ミサイルや爆弾を設計してたってことだけだ。実際驚きでも何でもなかったけどよ。勿論好感度がアップしたわけでもねえし」
双六じいさんはただ微笑んで会話を打ち切った。だって、彼はオレが嘘をついていると知っていたんだ。ああそうさ、もし立ち止まって考えてみたなら、オレは海馬が奴のオモチャの為に法外な対価を支払ったことが分かったかもしれない。オレは剛三郎のことを思い出した…今でも奴の悪夢を見るんだ…オレは彼を実際知らないのに。しかし剛三郎は恐ろしかったが、海馬は全く平然としていた。それは彼にとっては、執務室でのいつもの一こまに過ぎないって感じだったんだ。オレには分かる。海馬の内面は死んでいる―オレはただ、奴がどうしてそうなったかなんて考えたくなかったんだ。彼の中に怒りを―そしてその源を見たことを、認めたくなかったんだ。
オレは単純なのが好きだ。遊戯とはイジメから始まった。オレは残りの人生を、彼にそれを埋め合わせるために喜んで使うだろう。彼は望みうる最高の相棒だ。これは単純。舞に惚れてる。彼女とやりたい―うん、これも単純。実際、彼女を好きで、彼女に何があったか、彼女は何を考え、感じているのか気に掛ける…オレは、人生において複雑なことはせいぜいこれくらいにしておきたかった。
認めるぜ。複雑な気持ちってのは普通イライラするもんだ。友達でいることは単純だ。時々酔ってオレをめちゃめちゃに殴る親父を愛するってのは、複雑なんだ。
そして海馬はオレの頭をクラクラさせた。奴は歩く複雑製造工場だ。だから、オレの一番の親友とそのじいさんを殺そうとするほどに闇雲な怒りでいっぱいの奴を理解するなんて、ましてや同情するなんてことは―全くオレには難しすぎたんだ。奴はサイコな父親を持つに相応しい変人だ。オレはそれで良しとしたかった。
正直言って、オレには海馬がわざわざ亀のゲーム屋まで来たこと自体驚きだった。それが他の奴だったら、そいつは闇の遊戯にノーと言えなかったんだって思うところだ。でもオレはあいつなんか大っ嫌いだが、海馬がオレが知ってる中で一番めちゃくちゃに勇気のある奴だってことは認めなきゃならない。
だから、オレは何故彼が黙って闇の遊戯についてゲーム屋に来たのかよく分からなかった。まるで闇には影が必要であるみたいに。何故彼は、オレ達が彼の存在を忘れてしまうまで、ただ黙ってそこに座って、双六じいさんが差し出した食べ物を拒絶して、壁や床を見詰めていたんだろう。もしかしたら、彼はそれを一種の取引だと見なしていたんだろうか。フェラチオ1回につき一晩ゲーム屋で過ごすとか何とか、変態趣味のビジネス契約の一種だと。海馬なら何だってやりかねない。別に闇の遊戯のことを心配してたわけじゃない。三千歳の男なら、自分の面倒は自分で見れるだろ。
オレは、二人が別々の体を持つのは良い考えだと思っていた。海馬のごたごたがあったって、やっぱりそう思っていた。遊戯が三千歳のファラオと体を共有することになったとき、オレはやっと一番の親友を知り始めたところだった。オレは彼に自分の人生を取り戻して欲しかった。杏子が彼のガールフレンドで、オレが彼の相棒の、普通の人生ってやつを。
最初のうち、それは闇の遊戯にとって損だった。彼が彼自身一人の人間であった頃から、どれだけの時が経ったんだ? 彼はそもそも覚えているんだろうか? そしてそれは遊戯を悩ませた―自分の方がこのことで得をしたんじゃないかって。彼は杏子と闇の遊戯を得た。そして、もし彼が闇遊戯の為を第一に考えないなら、それは遊戯じゃない。丁度闇遊戯が遊戯の為に常にそうしてきたように。
そして、オレが受け入れられないのはそこだ。他のこと―殺されかかったことや、侮辱や、あのろくでなし野郎が、遊戯に自分とモクバの命を救われた後ですら、遊戯に対し無理して礼儀を保たなければならない様子や、残りのオレ達を彼の屋敷に侵入したゴキブリみたいに見る目やなんか―は何とか飲み込めるとしても。
オレは、闇の遊戯が独立した人間になると決めた時の表情を見た。彼はそれを遊戯の為にした。闇の遊戯は第一に遊戯、最後も遊戯、いつも遊戯だった。海馬瀬人が関ってくるまでは。
そしてそれが、オレが海馬を心底嫌う最新の、そして最大の理由だ。
作者註: 私が思うに、他の人間に比べて、城之内は最も闇遊戯のことを遊戯の延長―遊戯を守り、デュエルのときに現れる男だと見なしています。また、彼には彼と海馬の人生の類似点―もしくは海馬の人生の方がより困難であるかもしれないことを認めたがらない理由があると思います。そして、城之内は彼自身の人生を変えようとする中で、海馬の贖罪の努力を理解するほどのエネルギーは殆ど残っていないのではないかと思います。彼はことによると、彼らは同じ道を辿っているのだと認めるのすら嫌がるかもしれない。また、私は皆さんの多くが海城ファンであることを知っていますが、これはあくまでサイドストーリーなので、私は彼にひたすら舞を追いかけさせることにしました。
