日本語ではあまりファンフィクションを書きませんが、試してみました:3 いつ書き終わるか(そもそもほんとに書き終わるか)わかりません。
でも出来ればレヴューしてください...
鏡
もしも生まれ変われるならば、その時はまた遊ぼうね...
エルルカがよく言ってたね、「鏡の向こうの世界ではすべてが逆だ」と。あの不真面目な魔法使いなのだから、ルシフィニア宮殿の誰も気にしてなっかた。でも、アレンは知っている。
鏡の中の世界のことを。
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「アレクシエル様!」
目を開けると、たくさんの人の顔が横たわっている少年を見下ろしていた。頭の中がグルグル回っていて、何が起こっているかよくわからない。
「アレクシエル!」心配そうな甲高い声が宮殿の廊下を響いた。少年を囲っている人の何人かが声の方向に向いて、その隙間から少年はその正体が分かった。きれいな金髪、鋭く、青い瞳...
「リリアンヌ王女様...」と、少年はつぶやいた。
リリアンヌは目を少し丸くして少年を見つめていた。
「どうしたのよ、アレクシエル?」と、リリアンヌは言った。
「えっ...」それ以上の答えを出せなく、少年は留まった。数秒間、誰も声を上げようとしなかった。少年は自分が何かいけないことをしたのではないかと、一瞬思ったが、ついにリリアンヌの驚いた表情は解けて、にこやかな笑顔になった。その笑顔はまるで少年の腎臓に突き刺すほど、明るく、きれいな笑顔だった。
「私たち兄弟でしょ?『様』なんてつけなくていいわよ。」と、リリアンヌは言って、少年の前に座った。大きい、黄色いドレスがリリアンヌをまとっていた。
「アレクシエル様!医者を呼びました。」廊下の向こうからもう一つの声がなった。
アレクシエル...そう。それが少年の名前なんだ。
何か違う。どうしてかはわからないが、少年は何かが腑に落ちないと全身で感じていた。自分の名前はアレクシエルではないとわかっていた。いあ、それ以上に、この状況のすべてが何かおかしいと、強く思っていた。
「だ...大丈夫だよ。医者を呼ばなくても。」アレクシエルはきっぱりと言って、立ち上がろうとした。しかし、動くのと同時に世界がひどく揺れて、また座り込んでしまった。リリアンヌは心配そうな顔でアレクシエルに手を伸ばした。医者を呼んだ若い召使いは頭を振った。
「アレクシエル様は急に倒れたのです。念のため、医者をお会いしてください。」
急に倒れた?覚えてない。
それは、倒れた事実よりも、アレクシエルにとって、ずっと怖かった。
医者は五分も立たない間に来た。真っ白な髭を持った老人は、呆然と立っていたアレクシエルのところにずんずんと近寄ってきた。少しびっくりとしたアレクシエルは一歩下がった。
「あの...本当に大丈夫です!」なんか、みんなが自分のことを心配していると落ち着かない。アレクシエルは、ひっそりと双子の姉の影に隠れているのが昔から好きだったのだ。
「もう、アレクシエルったら。」リリアンヌはくすっと笑いながらアレクシエルの手を取った。肌が触れた瞬間、アレクシエルの頬は暑くなり、急に息苦しくなっていた。手を放すのは失礼だと思って、できるだけその反応を隠そうとしたが、それでも心臓がバクバクしている。
「はい、こちらをご覧ください、アレクシエル様。」と、医者は無表情に言った。思ったより若そうな声に、アレクシエルは驚いてしまった。
エレックシエルはゆっくりと顔を上げた。医者の目は綺麗な真っ青...リリアンヌに似ていた。
どこかで見たことのある目だった。リリアンヌの目ではない。リリアンヌの目はお日様のように明るく、輝く目だ。この目は、深く、暗い、そして、とても古い目だった。底のない井戸のような...
長いピンクの髪。子供っぽい笑い方。鋭い視線。
かすかな記憶がアレクシエルの頭の中をグルグル回っている。手を伸ばせば届きそうなのに、何となくつかめない。
「何も問題がなさそうですね。」
誰かがアレクシエルの手を放した。下を見ると、医者のしわよった手が大きいコートの中へと動いている。リリアンヌの手だとアレクシエルは思っていた。それほどぼーっとしていたつもりではなかったのに。
「しかし、急に倒れたのは心配です。今日はゆっくりと休んでいてください。」
「ありがとう、クロックワーカーさん!」と、リリアンヌは言って、アレクシエルの手をまたつかんだ。
クロックワーカー?
「外に行こうよ!」リリアンヌはアレクシエルの手をぐっとひぱった。
エルルカ...
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廊下のクリーム色の壁に鏡が飾ってある。薄い茶色の木でできたフレームは一メートルぐらいの幅だ。通る間に、アレクシエルは鏡の中に自分を眺めていた。リリアンヌと同じぐらい長い、金髪の髪の毛は、黒いリボンで縛られている。服は豪華な黄色で、ボタンがたくさんついている。まるで、王子様みたいだった。
そう、アレクシエルは王子だ。ルシフィニアの国王、アース、とその妻のアンネの息子、リリアンヌ王女の双子の兄弟。アレクシエルは覚えている、宴会やパーティー、国王になるための勉強。リリアンヌと過ごした毎日。何年もかけて積み重ね上げた記憶。
記憶を一つずつたどっていくと何も問題がないのに、何か違う。何か合わない。その感じはどうしても振り切れなかった。
「大丈夫?」リリアンヌが言った。
顔を上げると、心配そうなリリアンと目があった。もうすぐ裏口へ届くところだった。あたりの廊下には誰もいない。
「うん。」と、アレクシエルは言ったが、声に力が入ってなかった。リリアンヌは半信半疑な目でアレクシエルを見つめた。それを見て、アレクシエルはまるで自分が親に怒れるような感覚に急に襲われた。
「ふ~ん...」
前を向いて、リリアンヌはそれ以上言わなかった。アレクシエルはすっとため息をした。
「ねえ、リリアンヌ。」
「なに?」と、リリアンヌは振り返らずに答えた。ドアは数メートル先にある。木でできたパネルの小さな隙間から、明るい外の光がかすかに見える。
「クロックワーカーさんって、子供とかいるの?」と、アレクシエルは小さな声で聴いた。
リリアンヌはドアで止まった。少し考える仕草をしてからアレクシエルを見た。
「いないと思うわ。」
「そうか。」と、アレクシエルは言って、一瞬床に目線を向けた。宮殿の奥にある静かな廊下でありながらも、きれいな黄色のカーペットだった。
「なんで?」リリアンヌは目を細めて言った。アレクシエルは肩をすくめた。
「いや...なんでも。」
リリアンヌは何か言いたかったように口を開けたが、すぐ閉じた。ドアを向いて、ハンドルをぐっと抑えながら大きい木の扉を押した。ゆっくりと開いた扉の隙間からくる明るい太陽の光はとても眩しかった。
「わっ!晴れてるわよ!」
確かに。外に出ると暖かい光が辺りを浴びていた。リリアンヌはスカートの端を少し上げて、明るい緑の芝生の上を駆けだした。太陽が髪の毛に当たって、輝いている。
「転ばないでね。」アレクシエルは微笑みながら言った。リリアンヌはアレクシエルに向いて、にこっと笑った。
「アレクシエル、海に行こうよ。」
海...千年樹の森の向こうにある海岸のことだろう。小さい頃の王子と王女は、両親に言わずに宮殿を抜けて、そこによく行っていた。昔は双子の部屋の暖炉の後ろにある秘密の出口を使っていた。
「いいの?」っと、アレクシエルはぽつりと呟いた。
「もう、アレクシエルったら!」リリアンヌは口をつぼめて言った。小さい頃から自分の言うとうりに回りが動くのが好きだった。今でもその傾向はある。特にアレクシエルに向かっては。
アレクシエルは一瞬どうしようか悩んだか、にこりと笑ってうなずいた。
「でも、日が暮れる前には帰らないと。」
リリアンヌは聞いていない。目は地平線を見ている。あの大きな森の向こうに海がある。アレクシエルはその前を向いた表情がずっと前から好きだったことをはたと気づいた。
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