Title :嘘つきと臆病者
Author:ちきー
DATE:2008/10/02
Series:Death Note
Rating:R
Category:Romance,Angst
Paring:L/Light
Warning:slash,Sexual Situations,Violence
Archive:Yes
Disclaimer:
ここに登場しているキャラクターの著作権はすべて集英社及び、小畑、大場両先生にあります。作者は楽しみたいだけであり、著作権を侵害するものではありません。また、この作品で利益を得るものでもありません。
Summary:
嘘つきと臆病者のお話。頭がいいと大変です

ぱかりと開いた目に映ったのはクリーム色の天井。

あまり睡眠を必要としない自分には、目を開いた瞬間が意識の覚醒と一緒だった。すぐに働き出す思考。だから、いつも仮眠を取るソファーでも、滅多に使わない最高級のベッドでもなく、こうして床に転がっている理由をすぐに思い出せた。

自分の肌に触れる熱に頭を傾ける。そこには昨日、…昨夜、意識を失ったままの状態で眠りについた彼がいた。苦痛に握り締められた指は、今は緩く握られている。何度も振られた髪は、いつものきちんとした身形の姿からは想像出来ないほど乱れていた。茶色の髪から覗く顔は白を通り越して青い。

いきなりそう言う行為に及んだ原因はなんだったか。その時の様子が感情と共に蘇り、いつもの癖で指先を噛んだ。

相変わらずキラに関する事はお互いそうと分かる明らかな嘘や裏に何か含まれていると思わせる言葉を吐くくせに、それ以外の事には彼が嘘を言わなくなったからだ。

それが腹立たしかった。彼の形の良い、まるでキスを強請るようなピンクの唇は、嘘しか言ってはならないのに本当を混ぜてきたから。顔を見るのも嫌なのに自分の瞳は、彼のどんな些細な動きも、例えば資料を追う目の動きやページを捲る指だとか、本当に愚かしいほど些細な動きを逐一追っていた。

捜査員が全員帰り、あとは彼だけになった昨夜、遂に苛立ちは頂点に達して彼を床に突き飛ばした。

突然の事に何も対処する事が出来なかった彼は、見事に床に尻をついた。私を見上げた琥珀色の瞳が一瞬傷ついた様に揺れた。それを見たくなくて、私は彼の上に馬乗りになり目を覆った。

「りゅ…」

「黙れ」

私の名前を呼ぼうとした唇がぴたりと止まった。その代わり膝に触れてきた手。乱暴を咎めるのではなく、どうしたんだと労わるのが伝わってきそうだった。パシと音を立てて彼の手を払った。見下ろすピンク色の唇が、掌の下の瞳が、揺れた。

黙れと命じたはずなのに、言葉を作ろうとするから彼の口を封じた。同性にキスされるなんて嫌悪しかないはずなのに、一瞬だけ体を強張らせた彼は床から頭を持ち上げて彼からも唇を合わせてきた。

押し込んだ舌で、嘘ばかりを吐いてきた口が言う本当が真実か探る。また振り払われないかとおずおずと伸ばしてきた手がもう一度膝に触れる。私は体を傾けて、もっとしっかりと調査を続ける。

いつの間にか目を覆っていた手は彼の頬に移動していて、琥珀色が私を見詰めていた。濡れた唇。かすかな隆起が上下する喉。乱れた呼吸に揺れる肩。触れた掌から伝わる頬の熱さ。

こくりと誰かの喉が鳴った。

指を伸ばした。一番上で止められたボタンを摘む。彼はシャツに伸びた指を見て、そして私の顔を見た。形の良い唇からは何も出てこなかった。だから、続けた。全てのボタンを外し、布を体から離した時も何も言わなかった。ただ、じっと私を見ていた。

それは私が彼の体の上を辿り、脚を開かせた時も変わらなかった。

無理やり彼の体をこじ開けた時もくぐもった呻きが聞こえたが、拒否の言葉は続かなかった。何度も彼に杭を打つ私の髪に汗が伝う頃、彼の手が持ち上がり私の髪に触れた。ぐしゃりとかき乱す手。それは、腰から広がるものとは違い、肺から酸素を奪い胸に苦痛を広げた。

元から乱れていた呼吸が詰まった。動きを止めた私に気づいたのか、彼は私の体を引き、肩に額を埋める様にして抱えた。こめかみに彼の唇が触れた。柔らかい熱が押し付けられた後、唇が動いた。私が黙れと命じたから、それは音にならなかった。けれど、その唇が動くたびに熱の篭った息が肌を焼いた。

直ぐ傍にあるけれど、私は彼の表情を見ない。もう一度、彼の唇が動いたのを感じる。

「月くん…」

彼を床に突き飛ばしてから初めて名前を呼ぶ。彼に聞こえるのかと危ぶむくらい小さな声だった。それでも、彼はすぐ傍にいたから、その声をきちんと拾った。

ぎゅっと、私を抱く腕が強くなり、私の腰に彼の脚が絡んだ。

それからはあまり覚えていない。ひたすら彼を暴いていただけだ。白い裸体をじっと見る。昨夜、飽きずに何度も辿った肌。カーペットに擦られて赤くなっている箇所が痛そうだ。

完璧に整えられた空調だが、さすがに全裸では寒いだろう。ベッドからシーツを持ってくるべきかもしれない。だが、私が傍からいなくなった隙に彼が目を覚ましたらどうする?キラである彼を見張るのは私の役目だから、そうするわけにはいかない。

彼が目蓋を持ち上げ、嘘を吐く唇よりも多少は信じられる琥珀が現れるのを待つつもりだった。

END