行方不明の目 (The Missing Eyes)

Not mine, not yours. Self-explanatory. No spoilers to worry about. No romance planned. Just an episode in writing. I'll translate... but I really have to write dialogue in Japanese first, and manga/anime is very dialogue-driven when you take away the pictures..

暴風警報が出た直後の買い物なんてだいっ嫌いだ。はっきり言って三十分前はまだ風も雨も大丈夫だったかもしれなかったけど、今なんか傘が役に立たないだけじゃなくて持ってた大事にしてた傘(ひまわりちゃんが十秒ほど一週間前に立った傘)が逆さになってしまったたし。絶対こんなの百目鬼のせいに違いない。

ってかこれってまずければ洪水になるな。まあ侑子さんちあたりは心配ないんだろうけど。

(三十分前)

「ワッタヌキワッタヌキ~♪」

「だから!何回歌にすんなって言ったら分かるんだよ!」

「だって~」

「だって~」

「もうまったくうるさいんだから…侑子さん、何とか言ってやって下さいよ。」

「まあ、かわいいのね。元気でいいわよね、子供って。で、私のバッテラと水餃子どうしたの?」

「裕子さん、それってどうしても合わないっすよ、それにお使いしないとバッテラなんか…」

「おお、ついでに俺も焼き餃子食いたくなったから無いんだったらかってこい。」

「っ手かなんでお前も居るんだよ!」

「オッデカッケオッデカッケ~♪」

そういうことでしょうがなくお使いに押し込まれていったのだった。帰り道の途中で雨宿りするわけにも行かず、いやいやとその道の最後の屋根の下から出ようとしたときにいきなり背中をたたかれた。

「おう。おまえん所に壱原っちゅうやつおらへんか?」

振り向いてみると色白のでかい関西人の侍が突っ立ってた。侍、と言っても刀と着物からそう見えただけだよな。侍、ってばかな。

「あの。侑子さんのお客さんですか?」

「客?まあそんなもんか。ついていってもええよな、がき。」

「何で侑子さんをお探しに?関西から…ですよね…あの、傘持ってませんか?びしょ濡れになりますよ。」

「とぼけたこと言うてんな、おまえも!いい加減に早くせんかい!」

「お急ぎなんですね。」

ため息を残して歩き出した。どうせ侑子さんの客なら無事について来るだろう。

(二十分前)

「百目鬼君ね、またあなたのために呼んであげたの。せっかく来てくれたんだし、晩御飯彼の分もよろしくね♥」

「居や僕のためにって言っても侑子さん、僕そんな着てほしいなんて思っても居ないし、まさかまた厄介な仕事じゃないでしょうねぇ。いやですよ、学校も七月の中旬ってテストのこと忙しいのに。夏休みに入るまで待てないんですか?」

「四月一日はしゃべりすぎ。お使い、遅くなると危ないわよ。台風の季節に入ってるんだから。」

「しゃべり過ぎ、しゃべり過ぎ~!」

「お前らもナ…」

気付いてみたら店に戻ってたし。

「侑子さん?居るんですか?」

「あらお帰り。良かったわ、無事につれて帰ってくれたのね。四月一日、お使いありがとう。そして貴方。何方と申します?」

「俺?覚えてないんか。」

始めてその男は笑った。不気味なにおいがするこの男から離れたかった。でも百目鬼も出てきてからその男の匂いが増した。なんだろう。あやかしじゃないよな。ほかの人には見えているみたいだし。侑子さんの後ろで歌っているマルとモロも遠く見えてきた。

「良くこの国にはお世話になってるぜ。でもお袋に嫌われてよ。大阪に戻られへんねん。でこの世を見る目無く知っちまって。俺って台風連れてくるんだ、家のばあさんの替わりに。覚えてるはずだぜ、あんたの対価のせいで俺がこんなこと毎年日本に台風来るたびやる羽目になったんだから。」

見る目、か。でもちゃんと見えてるみたいだ。無事に店までついて来たし、身動きをとるのに困って居なさそうだ。確かに玄関から出る様子は無いけど。

「願いがあるのね。」

「そりゃいくらだって在るわ。どうせまた対価が在るんやろうけど。ええわ、一番手ごろなやつから片っ端に。うちの目、お袋から取ってきてくれないか?」

「大事なものなのね。」

「おう。それに合った対価だろ。」

「そうね。」

どうせ聞く必要があったら言ってくれるはずだし、聞き飽きたから買い物袋を持って台所へあがった。

「遅いな。俺の餃子待ってんだよ。」

「でなんでお前がまだ居るんだよ!」

「侑子さんがいずれ分かる、て言ってた。」

ぶつぶつ文句を言いながら料理にやっと就いたところで侑子さんが珍しく台所に入ってきた。よく食べ物の油が服に飛ぶ、なんてでたらめな文句をつけてつまみ食いしたら逃げてる侑子さん。どっかり座り込んで苦笑いをした。

「貴方って本当に罰当たりなガキよね。」

「ガキよ、ガキ~!」

「いつの間にお前たちも!」

「モコナだって居るよ!」

「どうやってこんなにうるさい所で料理するんですか!」

「あのね。さっきの人の名前知りたい?」

「別に知りたくなんか-」

「彼の名前は天井秀一。」

「それでも教えてくれるんですか!」

「特別な力を持って生まれたわけでもないわ。祖母の力を代わりに背負っているだけ。祖母はね。台風と言うのかしら。生まれた台風はすべて彼女に吸いつけられるのよ。秀一君は自分の子供の命を救うため、そのこに自分のこの世を見る目をあげたの。代わりに日本に上陸した台風だけは自分の責任にすると約束して。その子はもう魂なんか無いわ。ただの目になってしまったのよ。あんな小さいころに台風に人生を取られちゃってね。でもあの顔をしている子だものね。」

「どういう顔のことっすか?」

「大事な娘の顔。決まってるでしょ。だから貴方に頼もうか、と思って。あの子を秀一の母から取り戻して、と。」

「何で僕がそんなことまで!」

「俺も行くんだな、それ。」

「そう。いいでしょ、百目鬼君も行ってくれるんなら。餃子こげちゃうわよ、そんなバタバタしてると。」

「あ、やばっ!でも侑子さん、関西遠いですよ、学校休んでなんか…それにあの人充分目、見えてるみたいですよ。」

「馬鹿ね、この世が見えなくても貴方とこの店はほかの世にだってつながっているのよ。だから見えてるだけ。」

「もう嫌ですよ、天気に関係する人。この前の雷獣だって、雨わらしの件だって、厄介なのばっかりじゃないですか!」

「駄目よ、そんな事言って聞かれちゃやばいでしょ。もう罰当たりでしょうがないんだから。」

いつの間にかなぜか揚げ物の多い夕飯のしたくが出来ていた。風呂上りのような天井さんも今に座り込んでいたし、モコナも侑子さんと一緒に酒を楽しんでいる様だった。本当に学校さぼるんかな。

「おい、この夕飯だけが対価じゃなんかないからな。弁当数週間お前の責任だからな。」

「また偉そうな態度とるな!」

「元気やんな、おめえん家のバイト君。」

「そうね。可愛いでしょ。」

「侑子さんまで一緒になって-!」

「おい、ガキら、食べたらお前らは出かけるんやからな!なあ、侑子、モコナも行かせられるんか?」

「モコナ自身に聞いてみたら?私だったらモコナを連れて行くわよ、四月一日。」

「モコナ、行く?」といやいや聞くと張り切って「もちろん!」と答えられた。嫌だな、この感じ。モコナ連れて行くほどのことなんて。でも仕方ないから自分の作った夕飯ぐらいは楽しむことにした。