Title :千人目の男
Author:ちきー(tiki2bg.
Series:Death Note
Rating:M(16歳以上を推奨)
Category:Romance,Drama,AUロマンス、ドラマ、原作とは異なる展開の世界
Paring:L/月、mention 初期L/月
Warning:slash,Sexual Situations,B/D,Non-con (rape)スラッシュ、性的シチュエーション、拘束、合意のないセックス
Archive:Yes
Disclaimer:
 ここに登場しているキャラクターの著作権はすべて集英社及び、小畑、大場両先生にあります。
 作者は楽しみたいだけであり、著作権を侵害するものではありません。また、この作品で利益を得るものでもありません。
 作者は溢れる月とLへの愛情から、彼らにいろんなことをして、させて、ほくそ笑んでいるだけです。

Note:
 引用した詩の訳詩はハヤカワ文庫「宇宙大作戦 新たなる航海」より。
 ベータはおりません。誤字脱字がありましたら、お許しください。

Summary:竜崎と月は同棲生活を営む関係にあります。そんな中、月が浚われ、そのことで自分にとってLはどんな存在か理解します。

「眼が覚めたかね」

眼が覚めると、見慣れない部屋のベッドに寝かされていた。両手は頭上に、両足は開かれた状態で鎖で固定されている。それに、身に着けていたはずの衣類は剥がされ、素肌にシーツを覆われただけの状態だった。唯一、自由になる首を回し、辺りを伺った。傍らには先ほど声を掛けてきたと思われる男が居た。

独特の雰囲気ですぐに分かった。竜崎の関係者だろう。ウェーブした髪に厚く隠されているのに、射るように凝視されているのが分かる。顎を掴まれ、顔を覗きこまれた。Lの関係者なら尚更、隙を見せるわけにはいかない。

証拠がなく、自白もありえず、だが、お互い、キラであることを知り、知られていることを知っている。それでも、相手を手放すことができず、時が、状況が満ちていないと自分を騙し、ぬるま湯のような同棲生活を送ってきた。

だが、それも、この男の出現で壊れてしまうだろう。自然と男を見る視線がきつくなった。

「ほぅ、いい眼だね。夜神 月、いや、キラ」

「僕はキラじゃありません。どこに僕を連れてきたんですか?」

「素直に教えると思うかい?」

似ていると思ったが、僕が知るLとは少々違うようだ。突いた先が布のように、言葉が滑っていく。

「…今、何時ですか?」

「そうだな、それなら教えてもいいだろう。君が気を失って、時間経過で3日間と言う所かな」

率直に何時と言わないのは、単なる罠か、国外に連れ出されたからか?

「あの子と随分可愛らしい生活をしているようだね」

「だとして、あなたに何の関わりが?」

「あるとも。あの子が腑抜けては、Lとしての立場に問題があるからね。唯でさえ、Lが乗り出したにも関わらず、まだ解決に至らないと囁かれ始めたと言うのに」

キラ事件には、追うものと追われるもの、その当事者たちだけではなく、その周りの様々な思惑があることは理解していた。だが、危険が及ばない位置からの横槍に不快感が先立った。

僕の感情の動きを読まれたのか、少しだけ男の雰囲気が和らぐ。

「…全く惜しいことをしたものだ。この事件をあの子に譲りさえしなかったら、今頃君は私のものだったろうに」

「それはないですね」

即断する。竜崎に似ているが、この男に彼と同じことをしようとは断じて思わない。

「おや、つれないね。昨日はあんなにしがみ付いて、ねだってくれたと言うのに」

全裸に気づいた時からあった疑問に答えられ、思わず溜息が漏れる。

「…レイプするほど困っているように見えませんでしたよ」

「君が私を銜え込み、悦んで腰を振る様を見せられたあの子はどうするだろうね」

「竜崎に何をした?彼はどこだ?」

「直接はまだ何もしていない。あの子のPCに侵入して、映像を送り込んだけさ。あの子はどうすると思う?自分以外のものに穢されたら興味を失くすと思うかい?それとも君ごときを取り戻しに来るかな?」

「竜崎なら、貴方を殺しに来るでしょうね」

「面白い。随分と自信があるようだね」

「貴方が思う以上に竜崎は僕に執着している。どれだけ僕が汚れようと、その汚れごとが僕である以上、竜崎は僕を手放さない」

「あの子はLであることを理解しているよ」

「だったら、何です?仮に僕がキラだとして、僕たち二人がLとキラであっても、僕たちはお互いの尾を喰み合って、逃すことなんて出来ない」

「それは随分とバイオレンスだね」

茶化すように笑う彼に、気づいた。おそらく僕よりも竜崎よりも歳上の男。長い間待っているのに出逢えていないのだろう。

「あぁ、なんだ。貴方、羨ましかったんですか?だから、僕たちの邪魔を?分かりやすいですね」

「…嫌な子供だ」

「貴方と僕だったら、竜崎は僕を取るでしょうね」

「寂しいことだが、その通りだろうよ。反対を押し切って、全てを終わらせた後、君をあの子と共にLとすることを打診してきた。いや、打診と言うよりも、宣言だな、あれは」

幼い眼で、そこにあった退屈を紛らわす術を取った自分。でも、それも終わりそうだ。僕が嫌がっても、連れて行く人がいる。

猫背で、幾ら寝ても隈が取れないし、甘いもの三昧の、普段はナマケモノ以上なのに、僕に関わることだけは幾らでも動く、馬鹿で幼稚で負けず嫌いで、愛しい竜崎。

「竜崎は僕を裏切りませんよ。嘘ばかりで言葉にも含みばかりだけど、僕を傷つけても僕の最善を考える」

「……千人目の男かね」

「必要とあれば、自らが絞首台に送り込みそうですけどね」

すっかり毒気の抜けた雰囲気を破る音を立てて、竜崎が現れた。傍らに立つ男に眼もくれず、表情を変えて僕の元に走り寄ってきた竜崎に、彼が引用した詩を思い出していた。

「兄弟以上の誠意を尽くしてくれる者は千人に一人だとソロモンは言う

…………

だが、その千人目の男が見つかれば、
その男は
たとえあなたが絞首台に立ったときでも
いや、そのあとでも
あなたの味方をしてくれるだろう」

『The Thousandth Man』
by Rudyard Kipling

0NE man in a thousand, Solomon says.
Will stick more close than a brother.
And it's worth while seeking him half your days
If you find him before the other.

Nine hundred and ninety-nine depend
On what the world sees in you,
But the Thousandth Man will stand your friend
With the whole round world agin you.

'Tis neither promise nor prayer nor show
Will settle the finding for 'ee.
Nine hundred and ninety-nine of 'em go
By your looks, or your acts, or your glory.

But if he finds you and you find him,
The rest of the world don't matter;
For the Thousandth Man will sink or swim
With you in any water.

You can use his purse with no more talk
Than he uses yours for his spendings,
And laugh and meet in your daily walk
As though there had been no lendings.

Nine hundred and ninety-nine of 'em call
For silver and gold in their dealings;
But the Thousandth Man he's worth 'em all
Because you can show him your feelings.

His wrong's your wrong, and his right's your right,
In season or out of season.
Stand up and back it in all men's sight
With that for your only reason!

Nine hundred and ninety-nine can't bide
The shame or mocking or laughter,
But the Thousandth Man will stand by your side
To the gallows-foot - and after!

END