Episode 7.1 Joker

Spoilers : S6#11(誰も知らない存在/Werewolves)

AN : このエピソードで、ソフィアがやけにサラに冷たいと感じるシーンがあって、それが気になって背景を考えたら、こうなりました。/ Time set around S6#11(誰も知らない存在/Werewolves).


Chapter 3 side:Sofia

ソフィアは腕時計を見た。もう何度目か分からない。辺りはすっかり暗くなってしまった。
溜め息をつき、もう一度電話をかけようかと思ったとき、車のヘッドライトが見えた。
車はゆっくり近づいてきた。縁石に寄せ、停車する。ラボの車だった。
ライトが消え、エンジンが止まる。運転席で身動きする人物の影に、ソフィアは小さく息を吐いた。
あれから彼女と話をするのに、どうしても刺々しくなってしまっていた。
彼女も恐らく、ソフィアの変化に気づいているだろう。
問題は、その理由まで、相手が気づいているかどうかだった。
もし、知っているぞ、と告げたら、彼女はどんな顔をするだろうか?何を言うだろうか?
ソフィアは首を振った。それを告げるときの自分は、きっと悪魔のような顔になるだろう。
だからまだ、それは出来ない。
キリリと、胸と胃が痛んだ。
車を降りて、キットを取り出し、近づいてくる人影に、ソフィアは声をかけた。
「遅かったわね」
冷静にと努めたが、最初から、失敗していた。すでに声には棘があった。
しかし彼女は、それには思ったより友好的に答えてきた。
「ごめん。メッセージ見て、すぐ来たんだけど」
あまりに遅いので、ショートメッセージを送ったのは30分ほど前だ。
ソフィアは噛んでいた爪楊枝を手に取った。
「ほんとに?留守電に伝言を残したのは数時間も前よ?」
嫌らしい言い方だ。ソフィアは自分の声色と言い方に腹が立った。
彼女は、表情を強張らせた。出来るだけ友好的にと声をかけたのに、ソフィアに突っぱねられてほんの少しショックを受けたような表情をしていた。
「どうしたの?」
彼女は仕事の話を促した。その声にもついに、少しの棘が混ざったのを、ソフィアは感じた。自分が棘のあるボールを投げたのだから、それが返ってくるのは当然のことだ。
ソフィアは背後の電話ボックスを軽く指で示した。
「匿名の通報の発信源がここだったから、調べてもらおうと思って」
仕事の話なら、もう少し冷静に出来るだろうと思ったが、ソフィアは声のトーンを変えるのに失敗したことに気づいた。
彼女はそのまま電話ボックスに近寄り、入り口からライトで中を眺めた。
そして、驚いたように言った。
「指紋パウダーが付いてる」
ソフィアは爪楊枝を捨てて、皮肉な笑みを浮かべた。
「あんまり暇だったから、手伝おうかと思って」
ソフィアだって鑑識出身なのだ。指紋採取くらい、お手の物だ。
だが彼女は、勿論、いい顔をしなかった。ソフィアは今は刑事。仕事の領分を侵されて、いい気がするわけがない。
「指紋は取れなかったけど、床を見て」
彼女は一瞬、何かを言いたそうにしたが、ほんの僅かに呆れたような顔をしただけで、電話ボックスに向き直り、しゃがみ込んだ。
床には、被害者宅と似たような毛が大量に落ちていた。
これが多毛症の被害者の毛なら、なぜそれがここにあるのか。匿名の通報の記録は、被害者の死亡推定時刻の12時間も後だったからだ。
ソフィアがそう説明すると、サラはしばらく考えた後、何も言わずに床の毛を採取し始めた。
ソフィアは彼女の採取が終わるのを、再び電話ボックスに寄り掛かりながら、待った。
思わず、また溜め息が漏れて、ソフィアは身じろぎした。
彼女に聞かれたかと心配したが、サラは反応を見せなかった。
彼女は証拠をキットにしまい、立ち上がるところだった。
立ち上がったサラが振り向く。二人は一瞬、視線を合わせた。

知ってるのよ。
思わず、ソフィアは叫びたくなるのをこらえた。
いいわね。彼に選ばれて、さぞ得意でしょうね。
ソフィアは奥歯を噛みしめた。自分がこんなに嫉妬深かったかと、驚いた。

「あたし・・・」
サラは何かを言いかけた。
彼女は下唇を噛んで、一瞬視線を下向けた。
「DNA、ウェンディに調べてもらう」
大きな溜め息をついて、サラはソフィアの前を通り過ぎていった。

分かってるのよ。
サラは車のキーを取り出しながら、背後のソフィアに心の中で言った。
どうバレたか知らないけど、知られてること、分かってる。
あなたが心の奥で、何を叫んでいたか、それもよく分かってる。
あなたの目を見たとき、分かった。
だって、私もそうだったから。
彼があなたと食事に行ったと聞いたとき、多分、私も同じ目であなたを見ていた。
心の奥で、何度も叫んでいた。
なぜ、彼女なの?なぜ、私じゃないの?と。

だから。受け止める。

サラはエンジンをかけながら、もう一度、ソフィアを見た。
彼女は電話ボックスに寄り掛かったまま、俯いていた。
たぶん、今彼女は、とても自己嫌悪に陥ってるだろう。
仕事中に、プロに徹せられず、私情を出してしまったことを。サラに感づかれていることを、ソフィアが感づかないわけがない。
サラはライトをつけ、サイドブレーキを下ろし、ゆるやかにアクセルを踏んだ。

離れていく車の音を、ソフィアは聞いた。
彼女への苛立ちよりも、彼女にそれをぶつけてしまった自分が何よりも腹立たしかった。
溜め息をつき、体を起こして電話ボックスから離れた。

知ってるのよ。・・・おめでとう。

笑顔で言えそうな日がくるまで、それまで、待って。
ソフィアは自分の車に向かって歩き始めた。

それまで、ラボの誰にも、言わないでいてあげる。


END.

AN 2 : 私はソフィアも某LH様も、悪者にするつもりはありません。
めちゃくちゃ悪者なファンフィクを読むのも、好きですけどね(笑)

次はまた、長編になりそうです。オリジナルケースがメインにはなりますが、本編エピソードも絡んできます。