「この小さなペガサスに馬車を引かせるって?大丈夫なのか?」
ミニマスを見たセドリックは驚き、そして呆れ、また心配もしていました。
「大丈夫だよ、ミニマスは最高のペガサスなんだから!」
「最高ね…」セドリックは、むっとしてミニマスを睨むように見つめました。
「ソフィア、こいつ振り落としても構わないか?」
ミニマスは不機嫌そうに言いました。
「ダメだよミニマス。セドリックさんは今日、私の杖を選んでくれるんだから!」
ソフィアはクスクス笑いながらミニマスのたてがみを優しく撫でました。
まもなく、ミニマスには小さな馬車が取り付けられました。それは2人乗りの本当にちいさな馬車でした。王室の馬車らしく、飾りや彫刻はありましたが派手すぎず、どちらかといえばシンプルで可愛らしいものでした。ソフィアはすぐに気に入りました。
「わあ!可愛い!」
ソフィアは目を大きく見開いて喜びました。
「セドリックさん、道は分かる?」
「それは問題ないが、御者はいないのか?」
「人数が多いとミニマスが疲れるでしょう?ミニマスは小さいペガサスだから。」
「本当に大丈夫なのか?」
セドリックは不安でたまりません。
「私が手綱を持つから。」
ソフィアは、任せて!と言わんばかり。
「ああ、なら安心だ。」
セドリックの不安はさらに広がりました。
馬車の準備が終える頃、ソフィアを送るためにミランダ王妃がやってきました。
「気を付けて行ってくるのよ。」
「うん、ママ、分かってる!」
2人は抱き合い、そして微笑み合いました。
ミランダはいつもソフィアのことを信じていました。
「セドリック、ソフィアをお願いね。」
「は、はい、王妃様。かしこまりました。」
セドリックは決まり悪そうな声で言いました。
「何かあったらこの子を助けてあげて。」
「もちろんです…。夕方には戻ります。」
それを聞いてミランダは微笑みました。
ソフィアは馬車に荷物を乗せ自分も乗り込みました。セドリックもその隣に座りました。
大人2人だと少し窮屈だったかもしれませんが、小さなソフィアとセドリックには、ちょうど良く快適でした。
ソフィアは大好きなママに手を振り、ミランダも同じように見送ってくれました。
「いってきまーす!」
ミニマスは翼をはためかせると、脚に力を入れ大地を蹴り上げます。土煙がたち、馬車は空へとゆっくりのぼってゆきました。
ミニマスはバランスを取るのが難しいと感じましたが、飛び立つとそれはあまり気になりませんでした。
「すごいね、ミニマス。とっても上手だよ!」
「ありがとうソフィア、で、どっちに行けばいい?」
ソフィアはセドリックの方に顔を向け行く先を尋ねました。
「北だ。とりあえず北へ向かってくれ」
「ミニマス、北だって。あっちだよ。」
ソフィアは手綱を引きました。
「よーし、わかった!」
ミニマスは一声いななくと、翼に力を込めて羽ばたかせました。
ソフィアの荷物を見たセドリックは
「随分と用意がいいな」と苦笑しました。
「ママがいつもこうしてくれるの。」
ソフィアはいつも快適にしてくれる母親をよく見ていました。フライングホースの馬車に乗る時は上空を飛ぶため少しばかり冷えるので、いつも肩掛けかポンチョを用意してくれます。そして、遠出する時は軽食を持って出掛けました。ソフィアも同じように準備をしました。
「4つ先の国ってどんな所なの?」
「なんだ、アカデミーで教わってないのか?」
これから行く目的地について、ソフィアは知りたくてたまりません。
「エンチャンシアによく似ているが、少しばかり違う。いや、少し風変わりなところもある。そんな国だ。」
「そこにはよく行くの?」
「昔はよく通っていたな。大きな魔法学校があるんだ。」
「ああ、それで良い杖のお店もあるんだね」
「そういうことだな。」
ソフィアはセドリックとの会話を楽しみました。そして、これまで聞いたことのない国の話や、セドリックに関する話を聞いて満足でした。
セドリックも不機嫌そうに見えましたが、気持ちはそうではありませんでした。彼もソフィアと同じように、空の旅と何気ない会話を楽しんでいました。
