title:シャツを好きな理由(R)

AN:Seq「僕じゃない」

「もうやらないから!」

「そうですね。すみませんでした、月くん」

「本当に本当にやらないから」

「そうですね。すみませんでした、月くん。あ、腕をこちらに頂けますか?」

「本当に本当に本当にやらないから」

「そうですね。すみませんでした、月くん。あまり動かないで下さい。ボタンが留めにくいです」

白い指先がシャツのボタンを摘んで、不器用にボタンホールに潜らせようとしている。捜査以外にあまり忍耐力のない男がそれでも月からシャツを剥ぎ、シャツの下の白く滑らかな体に悦びを詠わせ、そして、他の者に見せないようきっちりとシャツを纏わせる許可を自分だけが持っていると、一連の行為を儀式のように行い、その権利を満悦していた。

今日もたっぷりとシャツの下の体を愛した。お陰で、肩に負った傷が甘く痛む。そして、すっかり腰が立たなくなった月を清めて、体が冷え切ってしまう前に、数時間前、自分自身が放り投げたシャツを月に着せていた。

行為の最中は何処かに行ってしまった理性が月に戻り、先ほどから照れ隠しに可愛らしい駄々をこねていた。

「竜崎、ちゃんと僕の話を聞いてる!?」

「そうですね。すみませんでした、月くん。でも、次からはボタンの付いてるシャツなんて着てこないで下さい。着せるのが面倒です」

面倒と言う言葉の割りに、竜崎の指はボタン留めよりもシャツの下の肌に触れる事に時間がとられていた。月にとっては、甘くて厄介ないたずらを仕掛けては手を叩かれる。それでもめげずに、肌を唇でついばむと髪に手が潜る。月に頭を抱き込まれ、あっ、んっ、など小さな喘ぎをうっとりと聞き、時にはこの段階で、着せ掛けたシャツをもう一度脱がせる事になる。

「なっ…!次なんてないから!」

「また私が着せて差し上げますから。安心して快感に没頭していいですからね。今日も気持ち良かったのでしょう?腰どころか手元が覚束なくて、ボタンが留められないくらいですから」

「~~~~!」

シーツの上に置かれていた月の手が横から飛んできて、シャツの袷を握った。残りの3つのボタンが留められないままだった。

じとりと、恨めしげに月を見る竜崎。まだ、いつもの儀式は終わっていない。ボタンを外す度に現れた肌に赤い跡をつける。そして、ボタンを留める度に、少しのお別れです、でも、私を忘れないようにと、肌に別の赤を刻むのに。

「まだ終わっていません」

「後は出来る」

ほんの少し前に体中をうねっていた快感が神経を焼き尽くし、月の指はまだ回復していなかった。ボタンを掴む指が覚束ない。

「…ぁっ」

つるりと指先から平たいボタンが逃れた。竜崎がため息を吐き、もう一度月のシャツに手を伸ばす。

「やらせてください。貴方に任せたら日が暮れます」

「………ありがとう」

ほんのりと月の頬に紅が乗った。どの月も竜崎の好物だったが、こんな風に年相応の可愛らしい表情をされると、腕の中に囲って何処にも行かせたくなくなってしまう。

「いくらでも私に預けてくださっていいですからね。貴方が寄りかかったくらいで、傾く私じゃありません。あぁ、でもボタンだけは止めてください。脱がせるのにも着せるのにも手間ですから」

「そんな指図なんて知らない。僕は僕の好きなものを着る」

こんなやり取りを飽きることなく繰り返す。

月がシャツを好きな理由。

*** ***

AN2:竜崎が月に服を着させてあげるってさせたかったのv

END