Title:Dec 17

[L月:NC17]

AN:2008 DN Advent calendar。2008年度 クリスマス企画よりちきーの作品です。

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1.まずは材料を準備。小麦粉:200g、ベーキングパウダー:小さじ1、ジンジャーパウダー:小さじ半、シナモン:小さじ半、ブラウンシュガー:100g、バター:50g、玉子:1個を用意します。

袋を摘んでボウルにブラウンシュガーを落とした。

「ちょっと待て。今100gよりも多かっただろう?」

「お菓子ですから甘い方が美味しいですよ」

「僕は甘過ぎるものは好きじゃない。それになんの為のレシピだと思ってるんだ。材料は正確に用意しろよ」

「…神経質」

「何か言ったか?」

「いいえ?」

2.ボウルにバターを入れて室温にし、柔らかくなったらブラウンシュガーを加えて白っぽくなるまでよくすり混ぜる。これに溶き卵1個分を少しずつ加え、シナモンとジンジャーも加えてよく混ぜ合わせる。

「力がいりますね」

「代わろうか?」

「いいえ、もう少しでしょうから頑張ります」

泡だて器でバターとブラウンシュガーをすり混ぜていたLの手元に、溶いた卵を少しずつ加えていった。Lと作業しているとお菓子作りと言うよりも実験という気がしてきた月だった。

3.小麦粉とベーキングパウダーをあわせてボウルにふるい入れる。ゴムベラで切るようにしてまんべんなく混ぜてから、ひとまとめにして手で軽くこねる。2分してそれぞれラップで包み、冷蔵庫で30分から1時間寝かせる。

Lがすり混ぜたボウルの前に今度は月が立ち、粉をふるい落とした。ボウルの中で細かくなった粉が山になっていく。作業台の周りに材料のロスもなく、月は自分の仕事振りに満足だった。

するり。

「うわっ!」

続いて腰に腕が回って後の体が密着して、首筋にキスを落とされた。

「ボウルから外れましたよ」

Lの言葉通りボウルの傍に白い粉が散っていた。

「っーーー!分かってる!お前が邪魔するからだろ」

エプロンをすり抜け、シャツの下に手を這わせた。今の月は両手が使えないし、暴れれば粉は散ってしまう。Lは思う存分月を煽った。レシピではこの後、1時間近く生地を寝かせる必要があった。

「料理って楽しいですね」

4.オーブンを180℃に温め、天板にオーブンペーパーを敷く。冷蔵庫から出して5分ほど置いた生地を適当な厚さにして、型抜きで好みの形にくり抜く。オーブンペーパーに並べたら、オーブンで10~15分ほど焼いたら出来上がり。

生地に型を押し、そぅっと引き抜く。生地にはスカートを履いた人型が出来上がった。それを天板に置いていく。

「結構楽しいな」

そう呟いた月の首筋には赤黒い痣があった。同じものはLの首元にも・・・。不本意だが、昨日の影響でまだ体が辛いと正直に話すと、Lは手加減してくれた。普段は傍若無人が歩いているような彼でも、そう言う時の手は驚くほど優しい。

絶対に言わないが、それを弱く見られていると感じて憮然とする一方で、Lに大切に思われているようでくすぐったかった。

生地から抜かれた星やクリスマスツリー、女の子と男の子の人型は天板に行儀良く並んでいた。生姜と甘いブラウンシュガーの香りがして焼きあがりが楽しみだった。

「あ・・・」

「どうした?」

「ジンジャーブレッド・マンが骨折しました」

「手当てしてやれば?」

「どうやってですか・・・」

「うわ・・・。お前、絵心ないな・・・。これ貰った子は泣き出すぞ」

「それを言うなら月くんはどうなんですか?これは鱗ですか?」

「いいんだよ!それは・・・練習なんだから」

今度は作業台の1辺にLと月は並んで立っていた。手には絞り袋を持ち、お互いの作品を貶し合っていた。二人は焼きあがったクッキーをアイシングで飾り付けていた。

今日のカレンダーから出てきたのは、赤地に金と緑の刺繍が施されたリボン。カレンダーから引き抜いたリボンの扱いに困っていると、月が預かってもいいかと尋ねてきた。リボンをどうしたら良いのか分からなかったLは承諾した。

しばらくしてキッチンから懐かしい匂いがして覗くと、月はワタリとジンジャークッキーを作っていた。この季節、ジンジャークッキーはハウスの子どもたちに人気で、もちろん幼い頃からLも大好きだった。月は大量に作ってハウスの子ども達、屋敷に遊び来る友人に振舞うつもりだった。

食べるだけでキッチンに用などないLが手伝う事になったのは、いい匂いで焼けたクッキーのつまみ食い目的が半分、そして、残りはいい匂いの月に悪戯が目的だった。

鱗が生えていると言われたツリー型のクッキーは子供たちに渡せない。溜息を吐いて月はそのクッキーを口に入れた。簡単に見えてきれいにデコレーションをするのは難しかった。

次に取り出したのは男の子の人型。絞り袋を手に心の中でひっそりと「僕なら出来る!」と気合を入れると、周囲を白のアイシングで縁取った。手のアイシングが少し厚くなったけれど、不恰好なほどじゃない。

次は顔だった。涙目にならないように、きれいにアイシングを丸く落とす。絞り袋を緊張しながら持ち上げ、自分の成果を眺めた。泣き顔でも怒り顔でもない、他のものよりも大きなぐりぐりの丸目の笑顔のジンジャーブレッド・マンだった。

「笑顔になりましたね・・・」

「うん」

厚みのあるクッキーだから穴を開けても割れない。月はエプロンのポケットからリボンを取り出し穴に通した。そして、リボンにぶら下がってオーナメントになったジンジャーブレッド・マンをLの前に突き出した。

「Lへ」

大きく目を見開いたLを見た。頬にアイシングの線が引かれていた。

「歪だけど…」

「ありがとうございます・・・」

Lはクッキーを受け取ると、そっと手に包んだ。

その夜、ライトで照らされたクリスマスツリーには2人のジンジャーブレッド・マンが仲良くぶら下がっていた。