title:「新たなるもの」より

AN:「新たなるもの6」から諸事情によりカットしたエルキラシーンです。

*** *** ***

アルコールには強い方ではないが、友人たちと騒ぐのは楽しかった。まだ軽く残る酔いに、口からはハミングが出ていた。ゲートから屋敷への道は、夜になって濃くなった霧が立ち込めていた。朧に見えてきたドアの下に塊が見える。

「エル?」

「…お帰りなさい、キラ」

「ただいま。こんな所で何してるの?」

「キラを待ってました」

「ここで?」

「えぇ…。キラ、酔ってますね?」

「うん。学期が終わったお祝いに少しだけ」

座り込んでいたエルがのそりと立ち上がり、僕の胸元をかいだ。店を出る前に軽くコロンをつけたから気づかれないとは思うが、トイレで友人とした行為が思い出された。

「煙草とアルコールの匂いに混じって、他の匂いがしますね」

「あぁ、コロンだろう」

「…店でつけ直さなければならない事でも起きましたか?」

「エル、何が言いたいんだ?」

「……」

エルと僕には頭一つ分の身長差がある。だから見下ろすと、指をくわえ俯いたエルの頭が見えた。気に入らない事があるとそうしていた。だから、いつもと同じようにエルを宥めた。そっと髪に手を差し入れ、髪を撫でる。

「…もう遅いよ。エル、中に入ろう」

髪を撫でていた腕が、下から伸びてきた手に引かれた。

「っ…!」

気づいた時には唇に触れられていた。エルに引き寄せられた勢いで唇が会ったから、歯が当たって切れた。それに気づいたエルが癒す様に傷を舐めた。

「エ、ル…」

いつの間にか頭の後に回されていた手が僕を引き寄せ、開いていた唇の隙間からエルの舌が入ってきた。エールの味がした友人のキスとは異なり、甘いお菓子の味。

胸を突いて、エルを引き剥がした。離れていく藍色の瞳が傷を露にしていた。

「どうして…」

「したかったからです」

「エル、僕達は兄弟だ。だから、こんな事はしちゃいけない」

「ずっとしたかったです。生まれてからずっと、私はキラに、こんな風に触れたかった。キラ、貴方が好きです」

「僕もエルが好きだよ」

「分かっているくせに、わざと間違えないで下さい。私の感情は、貴方が逃れようとしている家族の感情ではありません」

「エルは、…勘違いしているだけだ。人を寄せ付けなかったから、だから、…兄の僕と仲の良いのを勘違いしている」

「勘違いじゃありません。学校だって行きましたし、私にだって人間関係はありました」

「僕は、…僕達は、血が繋がっているんだよ」

エルの胸についた腕に力が入っていない。簡単に取られた手にエルの唇が押し当てられた。指を銜えられ、食まれた。くちゅりと唾液が絡む音が立った。

「血の繋がりがあろうとなかろうと、私はこう言う風に貴方が好きです」

「…っ!だ、めだ。こんな感情を抱いちゃいけないんだ」

奪い返した手をもう一方の手で包む。エルに触れられた指が熱を持っていた。

「どうしても、ですか?」

「どうしてもだ。僕はエルをそんな対象として見れない。エル、君は僕の弟だ」

「…」

「今の事は忘れるんだ。明日の朝にはいつもの兄弟だ。できるな、エル?」

屋敷に通じるドアに向かった僕の耳に、ひゅっと風の切る音が聞こえた。それと同時に頭に衝撃が走り、視界が傾いだ。徐々に薄らいでいく意識が捕らえたのは、顔をくしゃりと歪めて藍色の瞳から涙を零したエルだったような気がした。

ぼぅと意識が浮上した。目覚めと共に激痛が頭を走った。痛む頭を抱えようとした手が動かなかった。

変わりにがちゃりと耳障りの音が聞こえた。

「何、これ…」

頭上に上げられた両手首には手錠がはまっていた。傷つかない様に手首にタオルが巻かれた上に輪が嵌められているが、それは何の慰めにもならなかった。

突然の状況に荒くなった呼吸を意図して整えた。こんな状況ではパニックは何も役に立たない。動ける限りで、僕の置かれた環境を見回した。

僕がいるのはベッドの上。天井にはライト。部屋にはそれ以外の調度品の類はなく、従ってどこに居るかの推測の手がかりはなかった。次に僕の拘束。脚はないようだが、両腕はベッドの柵を通した長い鎖の手錠で拘束されている。引いてみたが柵も手錠もびくともしなかった。

自力の脱出が困難なのが分かって、僕は力を抜いてベッドに横たわった。分からない事だらけだが、一つ分かっている事がある。僕をここに連れてきたのはエルだという事。

「エル…」

僕の呟きにまるで呼ばれたようにエルが入ってきた。

「エル、どうして?」

「貴方はもう私の兄ではありません」

「え?」

ぎしりと、エルがベッドに乗り上げてきた。エルに恐れを抱いた事なんてなかったのに、今のエルに体が竦んだ。

「こうして鎖に繋がれた貴方は、人ではなく私のペットです」

鎖を愛しそうに撫でると、隠していた鋏を僕にかざした。

「ペットには服など必要ありませんね」

服をばらばらに切られた後、エルは僕を抱いた。
ベッドにうつ伏せにされ腰を高く上げられ貫かれた。準備もされずにいきなり突っ込まれたのだが、トイレでした時の潤いがまだ中に残っていて、ひどく傷つくのは免れた。だけど、それが余計にエルを怒らせた。

その後も何度も抱かれ、その度に気を失うほど責められたので、時間の経過が分からなかった。でも、きっとこうしてエルと二人で居るのは長くない。パパとダディが必ず見つけ出すだろう。

そうしたら。そうしたら、僕達はどうなるだろう。もう元に戻れないのは分かりきっている。僕はどうしたいのだろう。

*** *** ***

AN2:これ以上の続きを書く予定はありませんが、どんな展開になったかと言うと…。

Lと月はもちろん二人を見つけます。場所は、マットがエルに提供した隠れ家。エルの名付け親のマットは、エルがキラに執着しているのが分かってましたから、二人が親とは離れた場所を必要とするだろうと、エルにあげたものです。マットの意図の半分は面白~でしたが。
場所を見つけ出した月はすぐにでも迎えに行こうとしますが、Lはエルとキラに数日の猶予を与えてやって欲しいと月を止めます。ですが、結局エルはキラとの関係を発展させることができず、親達二人はエルが居ない間にキラを救出。
部屋に残ってエルの帰りを待ったLにエルは引導を渡されます。仕事はさせてやるが、キラに逢う事も屋敷に戻ることも禁じられたエルは、ひたすら仕事をしてぼろぼろになっていきます。
一方、屋敷に戻ったキラは悩みます。エルよりも近親相姦に対する罪の意識が強いキラですが、月と話して自分の感情に気づきます。
自分以外がエルの傍にいるのは許せない。これまでの恋人は全て黒髪に、濃い青の瞳を持っていて、自分はエルを一人の男として好きな事を自覚しますが、月もLもエルの場所を教えてくれません。
マットやメロから聞き出そうとしますが、もちろんL月から口止めがいっているので教えてくれない。キラはミサの助けを借りて、エルと想いを告げあったのでした。