Title:Dec 23

[L月、ワイミーズ]

AN:2008 DN Advent calendar。2008年度 クリスマス企画よりちきーの作品です。

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両手を交差させ、隣の人と「せーの!」で引っ張り合って・・・

パン!

そして、あちこちで上がる子供たちの歓声。

早速、クリスマス・クラッカーから出てきた紙の王冠を被っている。それは子供たちだけでなくパーティーの参加者全員で、会場にはカラフルな王冠を被った、たくさんの王様が誕生していた。

メロは緑、マットは茶色、ニアは紫。そして、Lは赤で、僕は金色だった。ちょっとした優越感を感じていたら、見抜かれていたのか隣から「案外子供ですね」と呟く声を聞いた。でも、黄金色の王冠を被る真の王様は寛大なので暴言を許してやった。

日本の三角のクラッカーと違って、この季節にしか出回らないクリスマス・クラッカーは筒状で、キャンディみたいに両端が捻られている。そこを隣の人と持ち引っ張って破裂させる。中からは僕たちが被っている紙製の王冠とちょっとした玩具やチャーム、そして謎々や格言がプリントされた紙。食器が立てる音に混ざって、たいてい答えがジョークになっている謎々に笑い合っていた。

僕のクラッカーからは間抜けな顔の魚のチャーム。Lのにはデスクルーペが入っていた。

「月くん、月くん」

呼ぶ声に振り向くと、ルーペに拡大された黒目。パーティーの雰囲気に触発されて子供っぽい真似をするLを笑った。

「月くんがよく見えます」

僕もその雰囲気に浮かれていたんだと思う。唇をLの耳に寄せていた。

「いつもはもっと傍で見てるだろ?」

ついでにぺろっと耳朶を舐めたら、Lは手で耳を押さえて動揺した。珍しい。普段は青白い頬に色が乗った。視線を巡らすと、僕たちの小さな遣り取りに誰も気付いた様子はない。テーブルの下で、そっとLの手が僕の膝に置かれた。そして、柔らかく膝頭を握る。

テーブルの端でクリスマス・キャロルが歌われ出した。徐々に歌声はテーブル全体に広がっていく。僕も小さく歌いながら、Lの手に手を重ねた。

お腹がいっぱいになるとツリーの下のプレゼントを子供たちに配る時間。

院長のロジャーがプレゼントにつけられたタグの名前を呼び、子供たちにプレゼントを手渡していく。部屋はびりびりに破られた包装紙でいっぱいになった。贈られたサッカーボールで遊びたいのに、あいにく外は雪がちらついている。可哀想だけど、ボールで遊ぶのは明日になりそうだ。

ハウスを卒業して多くの年が経っていない所為か、メロとマットを覚えている子供は多く、二人はハウスの人気者だった。今も二人の回りには子供たちの輪が出来ている。ニアに言わせれば、精神年齢が近いからとの事だ。

そんな憎まれ口を言うニアも部屋の隅でパズルを広げているが、その傍には小さな男の子。端からパズルのピースが埋まっていくのを、床に寝転んで見ていた。普段は控えめなワタリさんもロジャーとアルコールを片手に談笑にふけっている。時々深い笑い声が響く。

ハウス中がクリスマスに染まっていた。

*** *** ***

Lの手に引かれて、パーティーの騒々しさから逃れた。辿り着いたのは宿舎のひと部屋。相部屋なのか部屋には2段ベッドが2つ。その間に大きなテーブルが置かれていた。

Lは2段ベッドの一つに座った。隣を叩くから僕も小さなベッドに座る。ベッドは低すぎて、膝が急な角度を作った。

「勝手に入って良かったのか?」

当然の質問にもLは肩を竦めただけ。

「私がハウスに入って、最初に宛てがわれたベッドです。今は・・・リアムが使っているようですね」

枕の傍に本が置かれていた。その背表紙にはLiamと子供の字で書かれていた。

「子供たち、楽しんでいたな」

毎年、ハウスの子供たちはLがクリスマス・パーティーに参加する事を期待しても、その期待が叶えられることはなかった。パソコン越しの挨拶とワタリがLの名前で手配したプレゼントが届くだけ。

だが、今年は違った。L自らプレゼントをツリーの下に置き、パーティーにも参加した。子供たちに人気のメロとマット、同じくハウスを卒業したニア。そして、もう一人。Lが傍らから離さない青年。ワイミーズハウスの子供たちは鈍感ではなかった。青年に対する態度で、彼はLに取って特別な存在だと察していた。

「乗り気ではありませんでしたが、来て良かったと思います」

「そう言って貰えたら嬉しいよ。連れ出したかいがある」

「月くん・・・」

「なに?」

「ありがとうございます」

この部屋に入居した時、Lは自分のものは何も持っていなかった。誕生日やクリスマスに与えられたものは、裕福な誰かから施されたものであって、自分が手に入れたものではない。

やがて力を得て、その効果的な使い方を知った。そうして、望むものは手に入れて来た。それは財力に限った事ではなく、探偵としても存生している中で自分が最も優れていると自負もしていた。事実、Lと言う名を知らない者はいない。けれど、傍に月がいる自分はかつてより上等な人間になった気がする。

それをどう言えば良いのか分からず、ただ礼を言った。それでも、月は理解したようだった。肩をLの肩にぶつけた。

*** *** ***


パーティーに戻ると、みんなが一斉に僕たちを見た。シンとなった部屋が一瞬で囃し声や手を叩く音、口笛でうるさくなる。女の子たちに至っては、キャーと歓声をあげていた。

「月くん」

くいとシャツを引っ張られてLを見ると、ドアに飾られたヤドリギを指差していた。

「あ・・・」

からかいと期待の視線が突き刺さる。

「仕方がありません。ね、月くん?」

「・・・全然仕方がないって顔じゃない」

いつまでも注目を浴びていたくなかったので、顔を傾けてLの頬にキスをした。だけど、不思議な事に着地点がずれた。先ほどよりも大きな歓声と拍手。

やがて、柔らかい感触が唇から遠ざかった。Lに腰を抱かれて部屋を横切る間、僕も回した手でLの背中を抓ってやった。

それから数分後、ヤドリギの下には立ち尽くすメロとマットの姿があった。