Title:Dec 24

[L月、M、M、N]

AN:2008 DN Advent calendar。2008年度 クリスマス企画よりちきーの作品です。

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遂に明日はクリスマス。アドベンド・カレンダーは全て開け終え、キャンドルは4本全て明かりを灯した。

一日中、屋敷の皆がそわそわしていた。ニアでさえも落ち着きがなかったように思える。ずっと髪を弄っていた。普段通りだったのはただ一人、ワタリさんだった。手際よく今日やるべきことを済ませていた。

夕食を軽くして明日の豪華なクリスマスディナーに備えた。ディナーと言うけれど、クリスマスのご馳走が始まるのは昼から。お腹がはち切れそうな程食べて動けなくなるのがクリスマスの伝統らしい。

明かりの消したリビングにはツリーが輝いていた。その中でいっそう光を弾くものがあった。カレンダーの最終日に入っていたのは、クリスタルで出来た星のオーナメント。透明に透き通った美しさは凛として潔かった。

部屋に下がるとベッドの上にいつものように座るLが僕を待っていた。部屋に戻ってきた僕を見つけると手を差し伸ばす。僕はその手の間に引き寄せられた。

ベッドの傍らに立つ僕の腰に腕を回し、Lはこつりと腹に頭を傾けた。抱くと言うよりも何だかしがみついているみたいだった。

黒髪を見下ろして、そっと手を差し入れる。見た目よりも手触りの良い髪を繰り返し撫でた。

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「月くん」

「うん」

「月くん」

「なんだ?」

「・・・ずっと傍に居て下さい」

「傍に居るだろ」

「ずっとです」

「うん」

Lの気が済むまで、僕は暖かな囲いの中で髪を撫で続けた。

その夜、夢を見た。

いつもの悪夢と違うのは、夢の中の自分でも気が付いた。

幼い自分がいた。背の高い棚に囲まれた部屋。どの棚にも本がぎっしりと並べられていた。見覚えがあるその部屋は、相部屋から次にあてがわれた部屋だ。他の子供より独り立ちが早かったから、その部屋にいたのはまだ幼い頃。今の自分の腰あたりしか身長はないだろう。

床に座って指をガリガリと噛んでいた。噛む場所はもうなくて、むき出しになった肌に歯を立てていた。

私が閉じ籠った部屋は棚が窓を塞ぎ、昼でも暗かった。部屋には照明があったから、陽の光が差し込まなくても私は気にしなかった。

やがて、幼い体が前後に揺れた。ガリガリ、ガリガリと先ほどよりも激しく指を噛んでいる。見ている私までそれは伝染して、いつの間にか指をくわえていた。

ぎぃと扉が開く。外からの明かりでそこに立つ人は影になっていた。

私の見守る前で、明かりから出て来た人影は茶色の髪を持つ青年に変わった。軽やかな足取りで部屋を横切り、床に座る私に手を差し伸ばした。じっと自分に伸ばされた手を観察する。差し伸ばされた手は安易に取ってはならない。どんな思惑が隠されているか分からないのだから。

凝視したままの手を月は根気よく差し出したままだった。ようやく小さな指先が月の手に触れた。その指先を月の手がそっと包む。驚いて弾かれるように覗き込んだ瞳には変わらない穏やかさがあった。おずおずと小さな手は月の手を握り返した。

花が開く様に月の顔に笑顔が広がる。正面から見ているわけではないのに、自分はその月の笑顔とそれに付随した感情を知っている。

口にくわえたままだった指も恐る恐る伸ばすと、月は小さな私を抱き上げた。

驚いたことに、高く抱き上げられた幼い私は声を立てて笑った。しっかりと月の首に回った両腕。子供特有の丸みを帯びた頬に月は口づけた。それにも自分はくすぐったそうに笑う。

小さな体を片手に持ち替え、空いた手を月は自分の胸に置いた。やがて、そこから星の形をしたものが出て来た。クリスタルの様な硬質で透き通る輝き。変わらない笑顔のままで月はそれを私に渡した。幼い子供は両手で受け取ると、月がしたように自分の胸に星を押した。それは溶ける様に胸に吸い込まれていった。

ぎゅうと子供の私は月の首に抱きついた。月も小さな体を抱き締める。

最初から気付いていたように、月は傍で見ていた私に視線を合わせた。途端に降り注ぐ月の暖かな感情。そして、幼い自分へ向けた包み込む笑みを私にも向けた。

「竜崎」と呼びながら。