Episode 8 Recollections
AN : 短いです。ちょっと一息的に。
Chapter 13 Thermite(side:Jim & Sofia)
「何年待たせたんだ、ん?」
真顔のジムに、グリッソムは静かに目を伏せた。
「分かってる」
去って行く友人の後ろ姿を見送りながら、ジム・ブラスはふと、後ろめたそうに耳の後ろをかいた。そして、ドアの外を見ると、急に大声を上げた。
「ソフィア!ちょっときてくれ」
「なに、警部?」
ちょうど通りかかったブロンドの刑事は、入り口に足を止めて部屋を覗き込んできた。
「なにか御用?」
ジムはペンでドアを指した。
「閉めてくれ」
眉をひそめ、ソフィアは静かにオフィスのドアを閉めた。
そしてやや緊張した顔で向き直りながらも、敢えて軽い調子で聞いた。
「どんな機密事項?」
ジムはニヤリと笑った。
「グリッソムが口止めに来た」
「は?」
ソフィアはきょとんとジムを見つめた。
「例の件だ」
「例の件?」
ソフィアは真剣な面持ちで、聞き返したが、すぐにはピンとこないようだった。
「ギルと・・・例の彼女の件だ」
ジムが眉をぴくりと上げながら言うと、ソフィアはようやく
「ああ」
と声を上げた。
「その機密情報ね」
ソフィアは腕組みをしながら苦笑を浮かべた。ジムはもう一度ニヤリと笑った。
そしてソフィアが軽い調子で答えるのを待ったが、予想に反して、彼女はしばしの間、俯いて床を見つめた。
僅かにジムが眉を寄せたとき、ソフィアが顔を上げた。
「分かってるわ」
静かに言ったソフィアの声は、微かに掠れていた。その声に、ジムはハッとしたようにソフィアを見た。
「話はそれだけ?」
今度はソフィアが居心地悪そうに尋ねた。
「ああ」
ジムが頷くと、
「じゃ」
ソフィアは片手を振ってオフィスを出て行った。
ジムは思わず首の裏を撫でた。
サラには「刑事の勘を舐めるな」などと偉ぶったが、どうやら見落としがあったらしい。
思わずため息が出た。
・・・仕方ないさ。サラとの付き合いの方が、ずっと長い。最初に彼女のグリッソムへの好意に気づいた時から、そして友人が同じく好意を持ちながらなぜか距離を置いていることに気づいた時から、彼にとっては「友人の大切な女性」としてずっと気にかけるべき存在だった。
いや、違うな。
椅子に座りながら、ジムは思った。
サラは美人で若くて目を引く女性だった。タフで、強情で、知的で、そして、脆かった。
時折見せるその脆さは、彼女の感情の起伏の危うさに象徴されていた。感情の激しさで言えば、キャサリンもそうだが、彼女は元ストリッパーなだけあって、雑草のような逞しさがある。
しかしサラには、強く固いが、簡単に折れてしまいそうな何かを感じていた。
娘、と言うには少々年齢がいってはいるが、いつしか、彼にとってサラは、「気をかけるべき存在」になっていた。
自身の娘エリーを思うと、彼には後悔しか無かった。
だからなのだろうか。
彼女で埋め合わせをしようと、自分はしているのだろうか?ちょうど彼女に、正しい父親像は持てずにいるであろう背景があるから?
ジムは机の上の写真立てに視線を走らせた。
もはや面影も無い、幼い頃の娘が、無邪気に笑っていた。
TBC.
