title:「紡ぐもの」シリーズより その後part.3
AN:WebClapにて公開した作品です。
「「新たなるもの」よりエルキラシーン」で割愛したシーンの話しになります。それぞれ独立していますが3話あります。
エルは兄のキラを誘拐・監禁した後、親達に屋敷に戻ることも、キラに会うことも禁じられます。遅れてエルへの想いを自覚したキラはミサの助けを借りて、エルと想いを告げあったのでした。
*** *** ***
廊下をぺたぺたと歩く小さい方の猫背を見つけた。後から走り寄って、腕を掴んで近くの部屋に押し込んだ。
「…ミサ」
「独立は?」
「許してもらいました。ミサ、あの…ありがとうございました。キラから聞きました。私の居場所を探す手伝いをしてくれたとか」
「エルのためじゃないわ。キラのためよ」
「それでも、ありがとうございました」
「キラがアンタを好きと言うから許してあげる。でも、言っとくわ。もしまたキラを悲しませたら、覚悟しておくのね。ミサだって、この家の人間なんだから」
「分かりました」
「…それってダッド?」
ミサは青くなり始めていたエルの頬を指差した。
「はい。パパを悲しませた罰だそうです」
「当然ね。ダッドがしなきゃミサが殴ったわ。ミサからキラを奪ったアンタなんて殴ってやりたいけど、キラが悲しむから止めてあげる」
「いいですよ」
「え?」
「殴ってもいいですよ?ミサにはその権利があると思います」
指を唇に咥えて、じっと覗いてくる濃紺をミサも覗き返した。
「いいわよ、もう」
本当に殴られてもいいと思っているエルに呆れて、ミサは踵を返して部屋から出て行った。扉が閉まる直前に、あんまり心配させないでと言い残して。
*** *** ***
失恋には慣れてる。だから、すぐに立ち直れる。
最初の恋は、それが恋と言うにはとても幼いものだった。それに、出会ってすぐに失恋した。恋した相手には、もう生涯を共にする人がいたから。
二度目の恋は、恋だと気づくには少し時間が掛かった。私たちは血が繋がっていなかったけど、兄弟だったから。
ミサは自分の部屋に急いでいた。無理だと分かっていたけれど、10年近く想い続けた恋が終わったのだ。今、誰かと会っても、普段通りに接する事なんて出来なかった。
「…っ」
廊下の角を曲がった時、誰かとぶつかった。
「ごめんなさい」
下を向いているから誰か分からないけど、横をすり抜けて行くつもりだった。
「ミサ」
呼び止められた。俯いた視界には綺麗に磨かれた革靴があった。
「ワタリお爺ちゃん」
顔を上げた。今はLにも月にもキラにもエルにも会いたくなかったから、ワタリお爺ちゃんで良かった。
「どうしました?」
そっと肩に触れられた手。どうしたのか尋ねられたけど、眼鏡の下の瞳は全部分かっているみたいだった。
じわと目の縁が滲んだ。一度、決壊したものは止めようがなくて、気づいたらワタリお爺ちゃんに抱き付いて泣いていた。それも、子どもみたいな大泣きだった。
「大丈夫ですよ」
何が大丈夫なのかさっぱり分からないけど、私はワタリお爺ちゃんが繰り返してくれるその言葉に、そうだったらいいとずっと頷いていた。
END
