(訳註) 本ページの内容は、(訳註)または(TRANSLATOR'S NOTE)と明記してある場合を除き、全てNenya85さんが書き本サイトに投稿した"I Guess it was in the Cards"を、ねこまが翻訳し、作者であるNenya85さんの許可を得て公開したものです。(訳註)または(TRANSLATOR'S NOTE)と書いてあるものは、翻訳者であるねこまが書き加えたものです。

TRANSLATOR NOTE: The contents on this page are the Japanese translation of "I Guess it was in the Cards" written by Nenya85 and posted on this web site except indicated by (訳註)or (TRANSLATOR'S NOTE). The texts indicated by (訳註) or (TRANSLATOR'S NOTE) are written by Nekoma, the translator of this fic. The contents are posted by Nekoma upon the author's permission.


第27章と終章を同時に投稿します。レビューへの返事は本章の最後に、作者註は終章の最後にあります。

読まれたらレビューをよろしくお願いいたします。


第27章A: 疾走

海馬瀬人の話

デュエル直後の夜

オレは走っていた。オレのカードから、オレの勝利から、オレの約束から。オレ自身から。

忌々しいサギー。

彼は、オレを騙し、同時に自由にした。

彼の嘲りの表情は、オレを刺激して本心を明かさせた。ことによると、三千歳の元ファラオと同居しているうちに、オレは終に気が狂ってしまったのかもしれない。しかしオレは、勝利者への貢物として自分を差し出すことはオレには決して出来ないと知っていた。従って、オレの避けられない敗北を宣言する前に、遊戯に対し自分自身を素早く約束せねばならなかった。

…そしてオレは勝った。

罠を仕掛けたのはサギーかもしれないが、餌に食いついたのはオレだった。オレ自身に対し、遊戯への一生の愛を宣告したのだから。オレは本来ならこれについてサギーに感謝しただろう。しかし彼はそれで止めなかった。しかしオレはそれで止めなかった。更に愚挙を重ね、オレはまた別の約束をした―よりにもよってオレ自身と。

オレはモクバと約束をすることに慣れていた。自分自身と約束するなどと言う無駄遣いはしたことが無かった。

しかしサギーを手にしてそこに立ち、遊戯と向かい合ったとき、オレは初めて自分自身を、Death-Tで弟を裏切った卑怯者としてではない、海馬コーポレーションのために数々の兵器を設計した悪鬼としてではないものとして見た。ああ、それらの部分はオレの中に依然存在している。古のデュエルモンスターと同じくらい深く、不変に石に刻み込まれている。何故なら、遊戯はオレを飲み込んだ闇を打ち破ったかもしれないが、その残滓である罪悪感と自己嫌悪を拭い去ることは出来なかったからだ。

そしてそれは公正なことだ。オレには残りの人生の間ずっとその重荷を背負うことが相応しい。丁度、オレの兵器が世の中にあり続ける限り、オレのデッキには死のデッキ破壊ウイルスと他のウイルスカードがあり続けるように。

オレの勝利のあまりに多くは―剛三郎に対するものも、双六に対するものも、決闘者の王国での遊戯に対するものも―ピュロスのものだった。それぞれが結局はオレの敗北につながる種を内包していた。だが、この新しい勝利は汚点がなく、代わりに、オレが懸命に手を伸ばし続けてきた真の未来につながる種を内包しているような気がした。それは今オレの目の前(恐ろしいほど近く)に待ち受けており…いつでも掴み取れる位置にある。

オレは、モクバと遊戯が何を伝えようとし続けていたのか終に理解した…オレが本当の自分だと信じていた一面は、実際には、オレの影に過ぎなかった。遊戯がその闇を彼の闇で覆うまで、それを超えた先を見通すことが出来なかった幻影に過ぎなかった。

オレは悪魔でも犠牲でもない、只の男の姿を垣間見た。彼の強さと弱さは、その勝利と敗北のように、分かち難くより合わされている―狂おしい挑戦と共に。

その男は自分の過去の残骸に囲まれながら、何とかして立ち続けていた。戦いの後の戦士のように、自分が生き残ったことに呆然として。しかし立っていた。それでも立ち続けていた。廃墟に囲まれながら、あまりにも強く望みすぎて信じることの出来なかった未来を突然に見て。

あの時オレがした約束はモクバと遊戯がオレのために望んだものであることは否定出来ない。何故なら、オレはその男を見つけることを約束したからだ。彼を未来へと導くことを。彼にしがみ付き離れないことを。オレが遊戯にしがみ付いたように、そうとは気づかずにいつもモクバにしがみ付いていたように。

オレは肩をすくめた。オレには分かっている。この先躓くことはあるだろう。決心が揺らぐことも。しかしオレは出来る限り誓いを守ろう。遊戯との。モクバとの。オレ自身との。

後戻りは出来ない。オレの勝利は、オレの誓約を完全なものとした。

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27B: 帰宅

闇遊戯の話

次の朝

オレがやっと彼のブルーアイズホワイトドラゴンを仕舞ったのは夜遅くだった。代わりに彼のヴァンパイア・ロードを手に取った。オレはこの魔物が一回毎の敗北の痛みを感じながらも、前途に待ち受ける挑戦を欲して新たなターンごとに甦る様子―決して墓地で安らかに眠ることに満足しない様子を思い出して微笑んだ。そしてオレは、瀬人の心が未だカードの中に宿っていることを望んだ…。

夜明けの直前だった。彼が大地の再生として非常に巧みに描き出した時間だ。ようやく玄関の扉が開いて、瀬人が中に入って来た。オレは彼と二度と再び会うことは無いかもしれないという恐れを感じ始めていたので、彼に怒鳴りつけるところだった。しかし、彼の燃えるような青い目にじっと見つめられて止めた。彼は無言で左腕を差し出し、袖を捲り上げた。火傷のあった部分を、黒で縁取りされた藍色のヒエログリフの刺青が埋めていた。オレは今まで気がつかなかったが、火傷跡は刀身の形をしていた。

瀬人はオレがその古代文字を読めるように腕を差し出した。オレは微笑んだ。それを読める少数の人間は、海馬が最も傲慢に彼の勝利を祝ったとしか思わないだろう。何故なら、大きな象形文字はこう読めたからだ―「ゲームの王」。藍色と、金色の縁飾りの間に、殆ど見失うほど小さく書かれたヒエログリフに気が付くのはオレだけだろう。それらは文を完成させていた。「ゲームの王…我は之に結び付けられ…之を放さず…之を慈しむ」


謝辞: 私はこの章の海馬の語りの部分を書き足そうとし、行き詰まっていました。その時、samurai ashesがメールで、彼女が感動したことの一つは、海馬が「立ち続けている」ことだと言いました。そこで彼の語りが出来上がりました。彼女に感謝します。

レビューへの返事:

Desidera, samurai-ashesへ―海馬がパーティーを去ったことについて: 私は、彼が起こった出来事に非常に動揺している様を表そうとしました。また、彼がどれほど他人と共にいることを好まないかを考えると、(バトルシティにおいてすら、彼は通常、飛行船のスクリーンを通して大衆とやり取りします)彼は出来るだけ早くその場を離れられる言い訳を探すだろうと思います。誰もそれに気がつかないであろうとは、確かに悲しいことですが、真実だと思います。

Desideraへ―闇遊戯が海馬を行かせたことについて: 闇遊戯は海馬がどれほど動揺しているか分かっていますが、彼を追いかけようとせず、彼が去るに任せます。私にとって、これが彼らの関係を成立可能にしているのだと思われます。闇遊戯は、海馬が彼自身のやり方とペースで始めるのに任せるだけの強さと辛抱強さを持つと同時に、海馬が正しい判断をしないかもしれないことを受入れる意思があります(と言っても、彼は明らかにそれを歓迎しませんが)。

samurai-ashesへ―海馬が闇遊戯に闇遊戯自身のデッキをあげたことについて: これは、海馬が、(時には例を示して)闇遊戯が独立した自分自身でいることと折り合いをつけるのを助ける物語でもあります。ですから、私にとっては、闇遊戯に彼自身の、表遊戯のものと対応したデッキを与えることは、海馬は彼ら二人がいかに一心同体であるか理解していると同時に、そのデッキは一種の「成人の」プレゼントであることを象徴しているのです。

Desideraへ―海馬の気持ちについて: 海馬は頭の中では非常に率直ですが、それを表に出すのに非常な居心地の悪さを感じると思います。何故なら、彼は感情は潜在的弱点だと考えているからです。ですから、私は彼を、非常に強い感情を持ちながら、それを表現する術を殆ど持たない人物だと考えています。

Desidera, Kagemihariへ―闇遊戯と負けについて: 闇遊戯は、海馬にとって勝つことがまさにカードの核心であるということを認識していると思います。彼はアルカトラズで、海馬に、彼らは互角に戦った―海馬が負けたのは、彼が劣ったプレイヤーだからでも、ミスをしたからでもなく、デュエルのメッセージのためだと言います。私はここで同じ意味合いを作り出そうとしました。しかし、たとえそれが分かっていたとしても、闇遊戯はやはりゲームの王です―ですから、彼にとって負けるのは辛いことでしょう―そして、同じ様に苛烈な競争者である海馬は、それを最も良く理解する人物でしょう。

Chibi Angelic Slayer, laura, Tokemiへ―ヒキについて: 私は単純に意地悪をしたわけではありません。私は海馬がどれほど動揺していたか示したかったし、彼の気持ちの混乱があまりに大きく、どんな行動も起こしうるという感じを出したかった。しかし、私が読者を26章も待たせた挙句に27章で主役を殺してしまうような奇人かどうか、皆さんが判断しようとしているのを見るのは、面白かったと認めざるを得ません。そして、ある場合にはこのアイデアは歪んだ魅力を持っていると認めざるを得ません。しかし、これは死ではなく、生についての物語です。

AnimeFan-Artemis, Crimson Violet Eyes, Female Yami/Yugi, Kaiba's Kobito, Kathy, Leland Lancaster, Light Spirit Sage, Lightning Sage, Sunrise and Sunsetへ―引き続き励ましてくださってありがとうございます。私はこんなにも長くこの話に付き合ってくださった方がいるのが信じられません。また、新しい読者の方を歓迎します。書き始めたとき、私は自分が思いや考えを紙の上に書き表せるとは信じられませんでした。ですから、私はこのストーリーが得た反応に感謝してやみません。