Episode 9 Letting in
Spoilers : S6#13(ラストショー/Kiss-Kiss, Bye-Bye)
AN : S6で一番好きかも知れないエピソードです。あのエピソードで、サラ役のJorja Foxの顔がずっと赤くて、鼻声っぽくて、風邪かな?と思ったところから思いついた話です。/ I love the episode. I thought that Jorja must have had a cold while shooting that episode. From that I came up with the plot of this chapter. / Time set during S6#13(ラストショー/Kiss-Kiss, Bye-Bye).
Chapter 3 Gray Hair(1)
その日シフトが始まったとき、サラは自分の喉が痛むことに気付いていた。
鼻声な事にも気付いていた。
頭痛が始まっていることにも気付いていた。
彼が先に呼び出されていなかったら、きっと休むように言われただろうなと思いながら、休憩室でアサインを待っていた。
キャサリンが顔を覗かせ、
「出動よ。ロイス・オニールの館」
サラに来るように指で合図した。
「ロイス・オニール?」
立ち上がりながら、サラは首を傾けた。
「知らない?」
先に立って歩きながら、若干驚いたようにキャサリンはサラを振り返った。
サラは肩をすくめた。
「ま、ベガスマフィアの生き証人ってとこかしら」
「お知り合い?」
尋ねてから、サラはほんの少し後悔した。案の定、キャサリンがちらりとサラを睨み付ける。
「サムと母の知り合いよ」
やっぱり。
「ベガスマフィアがらみなら、グレッグが喜びそう。呼び出した?」
「彼はとっくにグリッソムと向こうに行ってるわ」
「やっぱり」
車に乗り込みながら、サラは思わず笑ったが、すぐに軽く咳き込んだ。
キャサリンがチラリとサラを横目で見たが、何も言わずに車を出した。
************
デビッドの遺体確認に付き合ったときは、まだサラの体は重くはなかった。
喉の痛みはあったが、デビッドと会話するのにまだ苦労は感じなかった。
良かった、仕事は出来そうだと思いながら、サラは遺体搬出を見送り、キャサリンの元へ向かった。
キャサリンはロイス・オニールと自分の母親が写っている昔の写真を見て、なんとも言えない表情で笑った。
サラはそれが、どんな感情なのか推察しようとしたが、どだい無理な話だった。
キャサリンの家庭環境も複雑だ。サラは彼女を羨ましいと思ったことはだから一度もなかった。
ただ、この時だけは、若い頃の母親を見て、微笑むことが出来る彼女を、羨ましいと思った。
二人の関係を、羨ましいと思った。
どこかぼーっとしながら、サラはキャサリンが「トニー・コンスタンティン」からの色紙を見て解説するのを聞いていた。
殺害現場の床を見ようと膝を着いたとき、サラは少し関節の痛みを感じた。
唾を思わずゆっくり飲み込んだ。喉の痛みを強く感じたが、額を触ることはこらえた。
グレッグがオニールの伝記から得た情報を得意げに披露しながらやってきたのを、サラは相手をする余裕がなく無視した。
「これ弾痕だ。ソラゾール持ってきた?」
「ここは歴史的建造物だから、切り刻むのは気が引けるよねえ」
グレッグの言葉に、サラは頭痛が増すのを感じた。サラは緩慢に、グレッグを睨み上げた。
************
ラボに戻って、サラは真っ先に休憩室に向かった。コーヒーではなく、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出すと、一気に半分ほど飲んだ。
喉が渇いていた。
冷えた水は、痛みを増している喉にとても心地よかった。
「やあ」
グリッソムが休憩室の入り口で足を止め、顔を覗かせた。
「ロイスがシュリンプサラダを差入れに来たのに、追い返したんだって?」
グレッグの不満を聞いたばかりのサラは、それを言った。グリッソムはちらりと笑った。
「関係者に供与を受けるわけに行かないからな」
「グレッグ、がっかりしてたわ」
「期待する方が悪い」
サラは笑ったが、同時に軽く咳が出た。
去りかけていたグリッソムが戻ってきて、休憩室に一歩踏み入れた。
「大丈夫か?」
「何が?」
「ちょっと、鼻声じゃないか?」
否定しかけたが、サラはすぐに諦めた。なんだかその気力が無かった。
「みたい」
鼻をすすって、サラは答えた。
グリッソムはもう二歩、休憩室の中に進んだ。
「大丈夫か?」
「いまんとこは」
グリッソムが片手を上げかけて、戻したのを、サラは視界の端に捉えた。
「熱は・・・測ったのか?」
「ううん」
「測りなさい」
「やーだー」
グリッソムは一瞬驚いた顔をしてサラを見た。
サラはなぜ彼がそんな顔をしたのか、分からない、とぼんやり思った。
「ソフィアに呼ばれてるから、行かなきゃ」
もう一度ペットボトルから水を飲んで、それを持ったまま、サラは休憩室を出た。
そのペットボトルは、警察署に着いたときには空になっていた。
取調室に入ってソフィアの横に座ったとき、サラは身震いした。
「どうしたの?」
ソフィアが尋ねる。
「ここ、寒くない?」
「そうは思わないけど・・・」
サラはもう一度身震いしたが、それ以上何も言わなかった。尋問の間、サラはずっと悪寒を感じていた。
署から戻ってラボの休憩室のソファにどかりと座ったとき、サラはすでに寒気を感じなくなっていた。
頭痛もあまり感じなくなっていた。
それより、逆に体がぽかぽかと温かくなってきた。頭もホワホワとしてきた。
グレッグの、オニールの本から取ったのだろう古くさい言い回しがなぜか可笑しくて笑えた。
なぜウォリックはずっと真面目な顔をしているんだろう。笑えるのに。
キャサリンがロイス・オニールのクローゼットを羨ましそうに見回しながらコメントしたとき、サラはいかにもキャサリンらしいと思った。彼女と服の趣味が一致することは一生あり得ないだろうけど、と考えると、とてもおかしかった。
ドレスか・・・彼、あたしのドレス姿、見たいかな?
最初のデートはカジュアルドレスで行ったけど、あれ、彼、好きかな?
もし今度、ドレスコードのデートに誘われたら、もうちょっと・・・冒険しても・・・いいかなあ。
サラはぼんやり考えた。
ぼんやりホッジスにオニールの指輪を渡した。
「サラ?」
受け取ったホッジスが、サラの腕を掴んで呼び止めた。
「はん?」
サラは緩慢に振り返った。
「これの、何を調べるの?」
サラはホッジスがつまんでいる証拠袋を眺めた。
何だっけ。黄色い指輪。・・・裏切り者のカナリヤの色。キャサリンが言ってた。
ああ、そうだ。
「ロイスの指輪。発射残渣を調べて」
「サラ?」
「はん?」
サラはもう一度緩慢に振り返った。
「顔が、赤いみたいだけど」
「ホッジス」
「はい?」
「女性を詳しく観察しすぎるの、良くないわよ」
「そう?」
「キモい」
サラはぼんやりトレースラボを離れた。
ホッジスがショックを受けた顔をしているのには、全く気付かなかった。
ウェンディが何か心配そうに彼に話しかけるのも、聞こえなかった。
「ねえ、ギルバート」
オフィスに入ってくるなりサラがそう言ったので、グリッソムはギョッとして顔を上げた。
「どういうドレスが好き?」
「・・・は?」
グリッソムは眼鏡を外してサラを見つめた。
「サラ?」
「ふん?」
ほとんど間の抜けたような返事に、グリッソムは眉をひそめた。
「大丈夫か?」
「んん」
サラはぼんやりオフィスを見回していた。
「顔が、赤いようだが?」
ふと気付いてグリッソムが言うと、サラは首を振った。そして、せわしげに息を吐いた。
「ここ、暑くない?」
「暑いなら、その・・・マフラー?ストール?を、取れば?」
サラは首元に手を当てた。
「ああ、そうね」
しかし、これは喉が痛いので巻いておきたい。
サラは鼻をすすった。
その時、サラの携帯電話が鳴った。
相手はホッジスだった。彼が何を言ったかは、良く聞き取れなかった。彼はいつもそう。余計なことばかり言うから、聞き流していると、肝心なことも聞き逃しちゃう。
「ホッジス。行かなきゃ」
サラが身を翻すと、
「サラ、待て」
グリッソムが慌てて立ち上がった。
「私も一緒に行く」
サラはにこりと笑った。
「いいわよ、ギルバート」
グリッソムは急いで彼女の側に駆け寄った。
「サラ・・・あー、ここが、ラボだと、分かっているか?」
「ええ。あなたのオフィスでしょ?」
グリッソムはサラの顔がやはり赤いと感じた。思わず彼女の額に手を当て掛けて、オフィスのドアが全開な事に気付いて慌てて手を下ろした。
「あー、サラ・・・熱を測った方が・・・」
「ホッジス。行かなきゃ」
突然歩き始めたサラを、グリッソムは慌てて追いかけた。
トレースラボに入って、二人は面食らったように顔を見合わせた。
「虚栄心、汝の名はホッジス」
グリッソムのからかうような声に、ホッジスが焦ったように顔を上げる。サラはニヤリと笑った。
「誤解しないで欲しいな。別に、白髪を気にしてるわけじゃ。まだ少ないし」
やだこいつグリッソムに向かって何てこと言ってるのよ。
それじゃあグリッソムは白髪だらけって言ってるみたいなもんじゃない。
そうよその白髪がセクシーなんじゃない。それこそが彼の・・・
「ホッジス。白髪はチャームポイントなのよ」
サラはグリッソムがちらりと彼女を見たことに気付かなかった。
ホッジス。今度彼に変なこと言ったら許さないから。どうせあんたもすぐに白髪だらけになるのよ。あ、でもあなたがどんなに白髪まみれになっても、絶対にあんたのことをセクシーだとは思わないだろうけどね。
サラはにこりとホッジスに笑いかけた。
「指輪は?」
「指輪?」
サラはもう一度にこりとホッジスに笑いかけた。
「ああ指輪」
ホッジスはレポート用紙を探して拾い上げた。
「発射残渣は陽性だった」
「じゃあ、ロイスが撃ったのかもね」
「・・・お迎えに上がろう」
トレースラボを出て行きかけながら、グリッソムはサラを見て言った。
「君は帰りなさい」
「え、なんで?」
「帰って休みなさい」
「私も行くもん」
グリッソムはまずい、と思わずちらりとホッジスの様子を見たが、彼は再び鏡を覗き込み、自分の白髪をマジックで塗ろうとしていた。
グリッソムは急いでサラの肘を掴むと、再び自分のオフィスに戻った。
ドアを閉め、ブラインドも下ろす。
それから、サラを振り返って額に手を当てた。
そして盛大に溜め息をついた。
「熱があるじゃないか。何か薬は飲んだのか?」
「熱?」
サラは首を傾げた。
「ああ、どうりで、ふらふらする・・・」
グリッソムは慌ててサラをソファに座らせた。
どうりで、変な言動をしているわけだ。
グリッソムはサラが喉に手を当てるのを見た。
「喉が痛いのか?」
「うん」
「他にどこか、痛いか?手首はどうだ?」
「関節・・・あちこち痛い・・・」
言いながら、サラはグズグズと崩れ、ソファに横になった。
そして軽く咳き込んだ。
グリッソムは優しくサラの背を撫でながら、どうしたものかと思案した。
急いでオニールに事情を聞きに行かなければならない。ブラス警部を呼ばなければ。
しかしサラをここに置いておくわけにもいかない。
風邪薬もここにはない。
その時、ドアをタップする音がした。
「グリッソム?」
外から呼びかける声に、グリッソムは一つ頷くと、立ち上がってドアを開けた。
「ニック、頼みがある」
「何でしょう?」
「サラを家に連れてってくれないか」
ニックはオフィスの中を覗き込み、ソファで横になっているサラを見つけた。
「どうしたんです?」
「風邪のようだ。随分熱がある」
「あれま」
ニックは急いで中に入り、ソファの側で膝を付いた。サラの額に手を当てて、慌てて引っ込めた。その熱さに驚いたようだった。
「病院に行かなくても大丈夫ですか?」
グリッソムをちらりと見上げる。
「風邪薬で少し様子を見てからでいいだろう。頼めるか?」
「薬は、何か飲ませたんですか?」
「いや。何か持ってるか?」
「いえ」
「自宅に何かあるはずだ」
「分かりました」
ニックは頷くと、サラを優しく揺さぶった。
「んんー?」
うめいたサラが、何かを呟くのを、グリッソムは見た。
声は完全に掠れていたので、ニックには聞き取れなかったが、唇を読んだグリッソムには分かった。
ギルバート?今何時?と彼女は尋ねていた。
一瞬、まずいかもと思ったグリッソムだったが、声が掠れてしまっていてニックには聞かれない方に賭けることにした。
「頼んだぞ、ニック」
「はい、お任せを」
「何かあったらすぐ連絡してくれ」
「はい」
心配そうに振り返りながら、グリッソムはオフィスを出た。
携帯を取り出し、ブラスを呼び出す。ロイス・オニールの館で落ち合うように伝え、電話を切った。
もう一度肩越しに振り返ったとき、サラはニックに支えられながら立ち上がっていた。
************
自宅のドアをくぐり、ソファに座らされたとき、サラは再び咳き込んだ。
「サラ。風邪薬を何か持ってる?」
ニックが優しく尋ねる。
サラは無言でバスルームを指差した。
ニックは静かに離れていった。棚を開け閉めする音がして、次にキッチンの蛇口が開いて閉じる音がした。
すぐに、サラの手にコップが押し当てられた。
「ほい、これ飲んで」
言われるがままに、サラは薬と水を飲み込もうとしたが、喉が想像以上に痛み、思わずむせて吐き出した。
「大丈夫?」
ニックが慌ててティッシュをつかみ、テーブルの上を拭く。
もう一度ニックに薬を手渡され、サラは今度は注意して、ゆっくり飲み込んだ。
「さ、ベッドに行こう」
優しく促され、サラは立ち上がった。
サラをベッドに座らせ、ニックは靴を脱がせた。
「自分で着替えられる?」
サラは弱々しく頷いた。そしてそのままブラウスを脱ぎ始めたので、ニックは慌てて寝室を出た。
数分、リビングでウロウロしてから、ニックは寝室のドアをそっとノックした。
「サラ?ちゃんとカバーに入った?」
返事はなかった。
ニックはそっとドアを開き、中を覗いた。
枕とカバーの間にサラの顔を確認し、ニックは微笑を浮かべた。
静かに寝室に入り、サラの額に手を当てる。
熱を測ってから寝かせれば良かったと後悔しながら、ニックはカバーを直し、そして立ち上がろうとした。
「ギル・・・行かないで」
サラがニックの手を掴んで囁いたが、ニックには掠れていて聞き取れなかった。
「何、サラ?」
ニックは耳を寄せた。
「・・・行かないで」
ニックは困ったように自分の腕を掴むサラの手を見た。
そして、ふと顔をしかめると、サラの両腕を持ち上げ、手首を見た。
見間違えではなかった。
痣の上に、ニックはそっと自分の手を合わせてみた。その角度を確認して、溜め息をつきながら、ニックは首を横に振った。
・・・何があった、サラ?
思わず不安そうに彼女の額を撫でた。
サラの指の力が緩んだのを確認して、ニックは彼女の手をカバーの下に戻し、静かに寝室を出た。
************
廊下でニックを見かけて、グリッソムは呼び止めた。
「サラはどうした?」
「寝かせてきましたよ。1時間ほど様子見て、熱が下がったみたいだったんで、置いてきました」
グリッソムはニックを見つめた。
「鍵はどうした?」
「かけてきましたよ」
グリッソムはニックをもう一度見つめた。
「・・・鍵はどうした?」
ニックはグリッソムを見た。
「ああ、合鍵預かってるんで。緊急時用に」
にこりと笑うニックに、グリッソムは思わず睨み付けたくなるのを堪えた。
・・・私はまだもらってないのに。
「他に貰ってる者はいるのか?」
グリッソムの不穏な声色には気付かなかったかのように、ニックは明るく答えた。
「僕だけです。あ、でも僕が持ってることは、ウォリックやグレッグは知ってますよ。あと多分キャサリンも」
グリッソムは腕時計を確認した。
「ロイスは自殺じゃなかったんですって?」
ニックの質問に、
「ああ」
グリッソムは上の空で答えた。
「ニック、サラのアパートに一緒に来てくれるか」
・・・私は合鍵を貰ってないから。
さっき、オニールの館に行く前に、自分で自分の家に連れて行けば良かったと後悔しながら、グリッソムはニックと共に駐車場に向かった。
アパートのドアを叩いても、案の定反応は無かったので、ニックが鍵を開けて玄関を入った。
リビングもキッチンも暗かったが、バスルームに明かりが付いているのにすぐに気付いた。グリッソムは急いでバスルームへ向かった。
床に座り込んで、便器に頬ずりしているサラを見たときは、グリッソムは心臓が止まりそうなほど仰天した。
「サラ!?」
急いで駆け寄る。
ニックと二人で慌ててサラを抱き起こした。
「サラ?サラ?!」
頬を叩いて呼びかける。
ぐったりとしていたサラだが、目をうっすら開いた。
「ああ・・・ギルバート」
サラは唇を動かしたが、声は出なかった。
グリッソムは急いで額と喉に交互に手を当てた。
「酷い熱だ。動悸も早い」
「あれ、じゃあ薬が切れてまた上がったんだ」
時計をさっと確認しながらニックが言った。彼が最後に額を触ったときは、熱いとは感じなかったはずだ。
「便器って冷たくて気持ちいい」
サラが辛うじて声を出して言った。ニックは思わず笑ったが、グリッソムは笑えなかった。
「いつからトイレにいたんだ」
「さっき・・・」
「吐いたのか?」
「ちがう・・・」
サラはまた目を閉じてしまった。
グリッソムとニックは二人でサラをベッドに運んだ。
「ニック、水を持ってきてくれ」
サラの乾ききった唇を見て、グリッソムが頼んだ。ニックが早足で寝室を出て行く。
バスルームからアスピリンを持ってきて、ニックが運んできたコップを受け取った。
サラに持たせようとするが、腕に力が無く、グリッソムが水を飲ませようとした。
だが、サラはむせて薬も水も吐き出してしまった。
ひとまず、水だけでもともう一度コップを口元に運ぶが、それもサラは吐き出した。
「だめ・・・喉が、痛くて、飲み込めない」
か細い声でサラが言う。グリッソムは周囲を見回した。
「ニック、ストローか何か、キッチンにないか見てきてくれ」
「はい」
急いでニックがまた寝室を出て行く。
その間、グリッソムは指をコップに入れて水を付けると、サラの唇に垂らすことを繰り返していた。
サラは時々唇を舐めたが、数回に1度は咳き込んだ。
「ストロー、ジュースパックのがありました」
「ああ、そのジュースをそのまま開けて」
グリッソムはストローにジュースを少し溜めると、それをサラの舌の上に落とした。
サラは飲み込もうとしたが、それもむせてしまった。
ほとんど涙目で、サラが弱々しく首を振る。
「病院に連れて行った方がいいんじゃ?」
ニックが心配そうに言った。
「そうだな。これじゃあ脱水症状になる」
グリッソムはサラを抱き上げた。
「僕、毛布を持って行きます」
ニックはリビングに駆け込むと、ソファの毛布を取った。
二人は後部座席にサラを乗せ、横たわらせた。その体の上に、毛布を掛ける。
「デザートパームが一番近い」
助手席に乗り込みながら、グリッソムはニックに指示した。
TBC.
