第5章「手紙」

 夜。 シリウスは窓を開けて1羽の黒いふくろうを空へ放った。

 アズカバン。
 ハリーは先ほど、魔法省の役人から 明日の夜にディメンターのキスが実行されることを聞かされた。
「そんな…。裁判はどうなったんですか?」
「シリウス・ブラックをかくまっていたおまえに、裁判の必要はないと決定が出た。潔くあきらめるんだな」
 そういって、役人は去っていった。
 ハリーは愕然とした。
(どうしよう。でも、シリウスもきっとここに捕らえられているはずだ。 僕とシリウス、どっちが先にディメンターのキスを受けるんだろう? もし、シリウスが先だったら謝ることもできない!!)
 ハリーはふと、窓の鉄格子付近に黒い羽が見えていることに気づいた。
 彼は不思議に思い、手を鉄格子の外に出した。
 そのふくろうはハリーの手に包みをのせた。
 ハリーはすぐにパッケージを開けた。 中からは四角い鏡と1枚の羊皮紙が出てきた。
 羊皮紙に書かれていたのは、シリウスの字だった。
『ハリー、すぐに君と話したい。鏡に向かって、君は私の名前を呼んでくれ。これは両面鏡なんだ。鏡を通して、お互いに話すことができる』
「シリウス… ごめんなさい。僕のためにこんな危険を冒して…。 でも僕は使えない。 僕には、この鏡を使う資格はない…」
 ハリーは鏡を包んで元に戻した。
 そして、彼はずっと隠していた羽ペンと小さく丸めた羊皮紙を取り出した。
 他のものはすべて取り上げられたが、これだけは何とか所持していることができた。
 ハリーは一番謝りたいシリウスに向けて、手紙を書いた。
「お願い。これを必ずシリウスに届けて。でもシリウスも危険な状態かもしれない。だから十分気をつけてね。多分、これが僕からの最後の手紙になるだろうから」
 ハリーはふくろうの足に手紙と鏡をゆわえつけた。 ふくろうは飛び去っていった。

 グリモールド・プレイス12番地。
「シリウス! ふくろうが戻ってきたわ」と、ハーマイオニーが言った。
「何か持っている。手紙のようだな」
 シリウスはすぐに小さな羊皮紙をあけた。 そこには、見慣れた筆跡があった。
「ハリー!」
 シリウスはハリーの手紙を読み始めた。
「シリウスさま」
『僕はアズカバンの最上階にいます。シリウス、本当にごめんなさい。僕は取り返しのつかないことをしてしまいました。 今、あなたはどうしていますか? 僕はあなたの無事を祈っています。でももし、僕と同じアズカバンにいるのなら、あなたに手紙を送るのは今日が最後です。 僕は明日の夜、ディメンターのキスを受けることになりました。 シリウス、今まで本当にありがとう。 あなたと過ごした時間は、一生忘れないよ。そして、あなたの無実を証明することができなくて、ごめんなさい。 ハリー。 追伸:ロン、ハーマイオニー、ずっと友達でいてくれて 本当にありがとう』
 手紙を読み終えたシリウスの目には、涙がたまっていた。
「シリウス?」
「何が書いてあったの?」
 ロンとハーマイオニーが心配そうに聞いた。
「ディメンターのキスの実行は明日の夜だ」
「何ですって!?」
「つまり、明日の夕方までにハリーを助け出さなければならないということだね?」
「ああ」
「だけど、どうやってあそこまで行くの?」
 ハーマイオニーが聞く。
「シリウス、君のオートバイはまだ使えるか?」と、ルーピン。
「問題ない」
「君のオートバイと箒を使ってアズカバンへ行き、ハリーを救う」
「アズカバンへは私が行く! 危険を感じたら、この透明マントで身を隠すさ」
「わかった、シリウス。どうせ止めても、君は聞かないだろう」
「リーマス」
 シリウスが微笑んだ。
「あと1人はどうするんだ?」
「私かロンのどちらかが行くわ」
「ダメだ! これは危険だ。前に君たちがシリウスを救出したときとは状況が異なる」
 ルーピンが言った。
「でも僕たちだって、ハリーのために何かしたいよ!」
 ロンが言った。
「おまえさんたちの気持ちはよくわかった。 だが、今回はここに残ってくれ」
 ムーディの言葉に、ロンとハーマイオニーはしぶしぶ引き下がった。
「私がシリウスに同行する。必ず、彼と一緒にハリーを助けて帰ってくるよ。約束する。だから、君たちはここで待っていてくれ。」
「わかったわ。シリウス、ルーピン先生、ハリーを助けて!」
 ハーマイオニーが涙ながらに訴えた。
 シリウスとルーピンは、しっかりとうなずいた。